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心配より応援の言葉を 100cmの視界から―あまはいくまはい―(30)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

セミの声を聞くと、妊娠のラストスパートだったこと、そしてわが子たちが新生児だったころをよく思い出します。私の子ども、碧(あおい)の誕生日は7月30日、夏帆は8月3日で、この夏、5歳と3歳になりました。2歳差育児があまりにも大変で、一日一日を乗り切るのが精いっぱい。喉が渇いても、トイレに行きたくても、自分のことは後まわしでした。でも夏帆が2歳になり、この1年は少し落ち着き、自分のやりたいこともできるようになってきました。

碧を妊娠した時、30歳だった私は大学院生でした。親をはじめ、たくさんの人が心配のあまりに、出産を反対しました。「おめでとう」と言われることも少なかったです。でも私より10歳ほど若い、10代後半、20代前半の大学の友だちは、みんなとても喜んでくれ、赤ちゃんを楽しみにしてくれました。私は彼女たちに本当に救われました。

心配や反対は、今までの失敗や苦労した経験からくる、トラウマのようなものです。若い人たちは、出産、育児に対する経験がないからこそ、心から喜んでくれたのです。

逆に出産育児の経験がある人からは「体は大丈夫?」「どうやって育てるの?」と責められるように聞かれ、つらいこともありました。私だって体は心配だし、赤ちゃんが無事生まれる確信もないのに。反対するのではなく、どうやったら不安やリスクを減らせるか、一緒に考えてほしかったです。応援してくれる友だちと、同じ障害で出産経験のある友だち、そして「できるところまでやってみましょう!苦しくなったら出せばいい」という医師のおかげで、不安を乗り越えました。

5歳と3歳の誕生日を、祖父母、いとこも一緒にお祝いしました

経験者からのアドバイスで助けられることはあります。でもアドバイスをする人と、される人では、生きている時代も環境も異なります。アドバイス通りにやったからと言って、同じ結果が得られるわけではないのです。出産直後、私が母乳とミルクの割合に悩んでいた時、先輩ママに相談すると「あなたはどうしたいの?」と最初に聞かれました。今まで、その人の経験や知識を一気に話す人にしか出会ったことがなかったので、その質問に驚くと同時に、「自分がやりたいことを考えて、それを大事にしていい」と思えて、心がとても軽くなりました。

悩んでいる人がいたら、まず「あなたはどうしたいの?」と聞きたいです。そして自分の経験を話しつつも「あなたと私は違うから、自分で決めるのが大事だよ。困ったらいつでも手を貸すからね」と伝えられる人になりたいです。

(次回は21日に掲載します)

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2018 年7月24日 琉球新報掲載)