わが子がLGBTだったら? 人口の約10%が親との計算も【レインボーハート】


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

親の孤立も防ぐ環境を

「親にヒステリックに怒られるので死にたいと思ったことがあります」と、正直に伝えてきた沖縄の中学生がいました。

その生徒は女性として生まれましたが、自分を男性と感じているトランスジェンダーでした。親にもカミングアウトしているのですが、親が受け入れてくれず、逆にものすごく怒られるので、そんな時はもう死にたいと思ったとのこと。

私も両親にカミングアウトし、すぐには受け入れてもらえず大変辛かったですが、それでもカミングアウトした時はすでに26歳で、就職していたので実家とは別に住む家もあり、自分で自由に生きていくすべがありました。

そんな私ですら大泣きしたくらいです。その中学生はまだ未成年で、帰る家は親がいる家だけ。自分でお金を稼いで生きることもできません。そんな逃げ場のない状況で親に自分の大切な部分についてひどく怒られたらと思うと、命を絶ちたいと思う気持ちは無理もないと感じました。

実際、沖縄県内の中高生から寄せられるLGBTに関する相談の多くは親との関係です。最近も母親が受け入れてくれず死にたいと思ったとSNSでメッセージしてきた高校生がいました。LGBTの子どもたちにとって保護者が理解してくれない状況は本当に深刻で、命に関わる問題です。

保護者対象講演会も行っています=2018年12月7日、名護市立名護中学校

講演活動をしていて「社会全体にLGBTが理解されるのはいいが、わが子がそうであるとなったら話は別」とおっしゃる保護者の方が大変多いと感じます。日本はLGBTの理解が進んできたといわれますが、残念ながらまだまだ現状はこのような状況です。

さらに、沖縄のような親戚や地域のつながりが強い場所では、周りの目を気にしてわが子がLGBTであることを隠そうとか直そうとしてしまう保護者も多いのではないでしょうか。正月の集まりで「おまえんちの息子は彼女いるのか? 結婚は?」と親戚から聞かれ、「息子はゲイですから」なんてあっけらかんと話せる雰囲気ではないと思うのです。

LGBTは人口の約5%、単純計算で、父母がいる場合、LGBTの親は人口の約10%となります。しかし、そのほとんどは周りの誰にも相談できなくて孤立しているのではないでしょうか。もっと親も気軽に相談できる、そんな社会にしていかなければならないと切実に感じます。

「理解しない保護者が悪い」ではなく、わが子がLGBTだったら受け入れづらい今の日本で、さらに相談もできなくて孤立している保護者の心をどう救うことができるのか、そんな視点で取り組んでいく必要があると感じます。

(2019年3月26日 琉球新報掲載)

 竹内清文(たけうち・きよふみ) 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。