<金口木舌>豊かさと「黄金の花」

 名護市中心街にネーネーズの「黄金の花」が流れる。1997年12月、海上ヘリ基地の是非を問う市民投票を数日後に控えていた。メロディーは美しいのに胸が痛む。やりきれなさが募ったことが忘れ難い

▼歌は語り掛ける。「黄金で心を汚さないで/黄金の花はいつか散る」と。その通りであろう。市民は「黄金」のはかなさを知っている。それなのに重い選択を迫られ、苦しんでいる。不条理ではないか
▼「襟裳(えりも)岬」などの作品で知られる岡本おさみさんの歌詞に知名定男さんが曲を付けた。94年、在京テレビ局のニュース番組に採用され、ネーネーズを全国区に押し上げた。90年代に名を残す沖縄ソングの一曲となった
▼歌詞には「寿司や納豆食べてますか」ともある。もともとは「黄金」を求め、日本に出稼ぎにきた外国人を念頭に置いた詩だ。それが海上基地問題に揺れる名護市の空気にぴたりと合った
▼「黄金」のメッキは剥げ、政府は今、地金をあらわにする。そんな年の瀬、歌の世界で「見せかけの繁栄」を問うた岡本さんの訃報に接し、豊かさとは何かを考える。貧困にあえぐ高校生を取り上げた本紙記事に幾本もの電話が読者から寄せられた
▼涙ながらに「力になりたい」と申し出る女性もいた。痛みを共有する人々の温かな思いを重ねて豊かさを築こう。そう願い、辺野古で揺れ、貧困を見詰めた年を送りたい。



琉球新報