<金口木舌>アリの教訓

 働きアリの名の通りかと思いきや、さにあらずというのが面白い。アリの集団の2~3割は働かない。だが、集団を永らえさせるには必要な存在だという。北海道大の長谷川英祐准教授らのグループが英科学誌に論文を発表した

▼ほとんど働かないアリが集団にいることは分かっていた。一見ムダな存在がなぜいるのか。勤勉なアリばかりだと、一斉に働き一斉に疲れて働けなくなる。卵の管理など常に“人手”の要る仕事ができなくなり壊滅する
▼一方、普段働かないアリは、他のアリが疲れて働けない時に代わりを務める。かくして危機的な瞬間を逃れることができ、集団の長期的存続に欠かせないというのだ
▼成果主義という言葉が世を席巻して久しい。アベノミクスは第三の矢で企業に「稼ぐ力」を求める。成長につながるならいいが、目の前の利益を重視するあまり、人の切り捨てにつながってはいないか
▼22日の国会では「解雇ビジネス」なる言葉が飛び交った。働きが悪い社員を「ローパフォーマー(成績不振者)」と呼び、退職を促す指南書を人材会社が伝授しているという
▼長谷川さんらの発表資料はこう結ぶ。「組織の短期的効率を求めすぎると大きなダメージを受けることがある。長期存続の観点を含めた上で考えていくことの重要性が示された」。アリの世界だけの教訓ではないように思う。