<金口木舌>漢字のとめ、はね


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 いつからか、電話番号を覚えなくなってしまった。以前は友人や職場など、よくかける番号はそらで言えた。短縮ダイヤルや携帯電話が普及してからは必要性がなくなり、今は覚える気さえない

▼漢字もそうだ。ワープロ、パソコン、携帯電話、スマホと進化するにつれ、手書きの機会が減った。読めるけど書けない、思い出せないという場面が増えてきた。最近は、漢字を忘れたら携帯電話が辞書代わりになっている
▼パソコンの普及で多様な文字の形が増えたこともあり、文化庁の文化審議会が、常用漢字の「とめ」「はね」「はらい」などの細かい違いは誤りではない、との指針を示した。新しい指針ではなく、1949年に出した見解を再確認しただけらしい
▼小学校で一画一画を丁寧に書きなさいと教わった身としては、束縛を解かれた気分だ。「言」の1画目は活字では横棒だが、縦か斜めに書く人が多いのではないか。「女」の2画目は3画目より上に出ても出なくてもいいそうだ
▼文字の基本の形が伝わればいいとの寛容な考え方は、お堅い役所にしては珍しい。正しい書き方を教える書道以外では、重箱の隅をつつく指導よりも、子どもたちには漢字を好きになってもらう方が大事だろう
▼漢字を「書く」より「打つ」時代。便利な機器に頼らず、たまには自力で書くことも老化防止、頭の体操になる。