<金口木舌>離島の貧困問題


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 子どもを児童養護施設に預け、母親は車中生活を余儀なくされていることを知り、ショックを受けた。石垣市での話だ(5日付本紙)

▼家賃が払えず家を追い出されたが行くあてがなく、子どもだけは児童相談所の臨時措置で施設に預けられた。一方で母親は、今もホームレス生活が続く。本島内に3カ所ある母子生活支援施設が石垣市にあれば、救える親子だろう
▼最近は民間アパートを県が借り上げ、家賃を補助しながらひとり親の就労や子育てを支援し、親子で暮らしながら生活を立て直す制度がある。母子生活支援施設でなくても支援の方法はあるが、離島には行き届いていない
▼児童養護施設は何らかの理由で親が子どもを養育できないときに、子どもを預かり養育する施設である。最近では虐待を理由に入所するケースが多い。しかし石垣市の児童養護施設では「親の経済的理由」が入所理由のトップという。離島特有の事情が垣間見える
▼雇用や貧困の問題を椅子取りゲームになぞらえるのは、長年日雇労働者の支援に携わる生田武志さん。著書「ルポ最底辺」で安定雇用という椅子が得られるかどうかは個人の努力の問題ではなく、椅子と人間の数の「構造的な問題」と指摘する
▼椅子を増やすか、分け合うことを生田さんは提言する。氷山の一角と思われる親子の事例を「自己責任」で済ますことはできない。