<金口木舌>緻密なこども支援に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 心身ともに満ち足りて、初めて人は礼儀に思いが及ぶ。昔から伝わる言葉がある。「衣食足りて礼節を知る」。親の保護下にある少年にとって、自らの努力で貧しさを克服できる術(すべ)は少ない。社会が救いの手を差し伸べる必要がある

▼沖縄少年院にいる少年の生活を思い出す。母と弟の3人暮らし。母の仕事が見つからず「毎日、モヤシとごはんばかりを食べていた」。母親にも負い目やつらさがある。「ごめんね」と謝る母をいたわる少年の心持ちが胸に響いた
▼元県コザ児童相談所長の山内優子さんが8日、沖縄市で講演した。各地で始まったこども食堂の活動に触れ、さらに少年たちの身近に夜間の居場所をつくるよう提案する
▼児童館などを活用して緻密な支援をし、少年を地域につなぎ留める。帰宅を促すパトロールより、むしろ居場所をつくって、地域の大人が食事や学習の支援をしてみては、と
▼沖縄少年院を仮退院した少年46人の実態調査(2014年9月)がある。初めての非行は、小学生の時が8割近くに上る。幼いから社会に背を向け、あてどなくさまよう少年がいる
▼緻密な支援を行うのならば、地域をよく知る高齢者の知恵が力になろう。子育てにも、地域運営にもノウハウを持つ熟練である。目配り、気配りに長(た)けた力に頼み、次代を育む息の長い取り組みにつなげたい。やがて地域を興す“地力”ともなる。