<金口木舌>守るべきもの


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 緑の中に浮かぶかやぶき屋根の家々。15年前、観光情報誌に掲載されている風景を求め、国頭村安波区に足を運んだ

▼残念ながら、かやぶき屋根は1軒も残っていなかった。情報誌を見て来た観光客ががっかりして帰るという話を聞き、記事にした。住民の一人は「さみしいが、かやぶき住宅造りの名人も亡くなり、保つことができなくなった」と声を落とした
▼先日、久しぶりに安波区を訪れた。オスプレイが住宅地上空を昼夜問わず飛行するという訴えがあったからだ。安波区で生まれ育った平良信二さん(79)が飛行経路だと指さした山側には、かつてかやぶき屋根が並んでいた。今は、騒音をまき散らす米軍機がわが物顔に飛び交う
▼以前から飛行訓練はあったが、オスプレイの騒音はその比ではない。集落は谷間にあるため、音が増幅されると説明していた。「新たにヘリパッドができるのは安波区だ。騒音がさらにひどくなる」
▼平良さんは21日、東村高江区で開かれた抗議集会に参加した。1600人(主催者発表)が怒りのこぶしを上げたが、市民らの抵抗は抑え込まれ、22日に建設工事が再開された
▼かやぶき屋根のように、残したいものでもあっさりなくなる。守らなければならないものはある。美しい自然、静かな環境、安全な生活、恒久平和-。数の力で押し切る権力にあらがう意志。県民としての誇りもそうだ。