<金口木舌>昭恵夫人のもがきと挑戦


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 不妊治療の連載を手掛けた時に、当事者の女性が話していた言葉が印象に残る。「金銭的・肉体的なつらさよりも、精神的なプレッシャーの方がきつかった」

▼周りから「子どもはまだなの?」などの言葉はよくあること。外食をした時に子ども連れで食事をしている家族を見掛けると「夫に申し訳ないと思った」。彼女だけの責任ではないにもかかわらず、負い目を感じていた
▼不妊治療は心身共に女性に負担が偏りがちだ。晩婚化が進み、6人に1人が不妊治療の経験があるというデータもある
▼この人も同様の悩みを持ち、それを公に語ることに驚いた。安倍首相の妻・昭恵さん(54)である。不妊治療に通い、「嫁として失格だ」と言われたこともあったという。週刊誌AERAのインタビューに答えている
▼政治家一家の嫁として、プレッシャーは相当あっただろう。さらに少子化対策について「無理をして少子化対策をしたところで、はたして女性が生む動機につながるのか疑問です」と述べ、安倍首相の政策とは一線を画す発言をしている
▼昭恵夫人は米軍北部訓練場のヘリパッド建設で揺れる東村高江を訪れたり、反原発発言をしたり、居酒屋を経営したりと歴代の首相夫人とは異なる側面がある。あえて自分の意見を発信する背景に、昭恵夫人の“もがき”が垣間見える。その挑戦を見据えたい。