<金口木舌>宇嘉川と矛盾


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 汗がにじむ暑さだが、川の水はひんやりと冷たい。川に足を浸すと、テナガエビがつつきに来る。至る所から聞こえるセミや鳥の声が心地いい

▼先日、チョウ類研究者の宮城秋乃さんの案内で、国頭村安波を流れる宇嘉川を歩いた。大きな岩をいくつも越えたり、首の下まで水に漬かって泳いだりして上流を目指した。運動不足の身には大変な道のりだったが、大自然ならではの冒険を満喫した
▼周辺では準絶滅危惧種のチョウ、リュウキュウウラボシシジミがかわいらしく舞っている。宮城さんによると、宇嘉川は北部でも指折りの「自然度」の高い川だ。15日、国頭村を含めやんばる一帯が国立公園に指定された
▼宮城さんに「宇嘉川は目玉になりそうですね」と聞いたが、どうもそうはならないらしい。国立公園の指定地域から米軍北部訓練場は除外された。1998年に宇嘉川の河口部は米側に追加提供され、国立公園の区域に入っていないからだ
▼近くの新川川は指定されたが、より人の手が加えられていない宇嘉川が抜けているのは納得できない。さらに、建設が進む訓練場G地区のヘリパッドの供用が始まると、宇嘉川は海兵隊の川上り訓練に使われる
▼待ちに待ったやんばるの国立公園指定。だが、自然破壊と生態系の保護が同時に進む矛盾を抱え手放しでは喜べない。矛盾解決策は訓練場をなくすことだ。