<金口木舌>股のぞきの政権


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 上半身を倒して両脚の間から逆さに見たら、どう目に映るか。この「股のぞき」を真面目に考察した研究が今年の「イグ・ノーベル賞」を受賞した。“裏ノーベル賞”とも呼ばれ、「人を笑わせ、考えさせる」ユニークな研究に贈られる賞だ

▼受賞したのは立命館大の東山篤規教授ら。股のぞきをすると、距離感がつかみにくくなり、遠くの物が実際よりも小さく、平面的に見えることを実験で確かめた
▼安倍政権も沖縄を股のぞきで見ているのだろうか。辺野古、高江の新基地は要らないという沖縄の民意を小さく捉え、選挙で何度も示された強固な反対も平面的にしか見ない。永田町と沖縄の心の距離は遠い
▼沖縄にいながら逆さにしか見ないご仁もいる。辺野古訴訟の高裁判決は「新基地反対の民意には沿わなくても、基地負担減を求める民意には反しない」と国に都合よく解釈した
▼司法の公正、公平から離れ「在沖米海兵隊は県外に移転できない」「辺野古しかない」と決め付けた。防衛省幹部が「言わなくてもいいこと」と勇み足を認めるほどの「うゎーばーぐとぅ(余計なこと)」だった。司法の良心がかすんで見える
▼各地に残る伝承では、股のぞきは幽霊や妖怪の正体を見破る方法でもある。この国の行政も司法も、沖縄にとってはマジムン(魔物)のようだ。股のぞきをするまでもなく判別できるのが悲しい。