<金口木舌>分かろうとすること


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 列島を寒波が覆い、北日本で零度以下の冷え込みが続く。沖縄はようやく20度を下回りだした。氷点下の厳しさが想像できないでいる

▼那覇で昨年1月、史上最低気温の6・1度を99年ぶりに観測した。1917年以来だからほぼ1世紀ぶり。さらに言えば、20世紀初頭以来だ
▼世紀の数え方を間違っていた西洋史の専門家がいた。長じて研究者となっても「1900年代は19世紀」と数えていた。研究者同士の会合で気付き、すぐに皆の前で「間違っていた」と正直に認めた。その場にいた人は、あり得ない誤解よりも学究としての潔さにうならされたという
▼「分かる」とは、物事の腑分(ふわ)けを指す。森羅万象を分類できることが「理解」ということになるわけだ。分からないことに向き合うことが理解につながる
▼次期米大統領は特定の記者の質問を受け付けなかった。日本では誤解と偏見に満ちたヘイト(憎悪)が叫ばれる。自らの世界観を唯一とし、他者を攻撃する点で共通する。分からないこと、違うものへの寛容さはない
▼95年の阪神・淡路大震災からきょうで22年。発生後、民間レベルで救援活動が広がり95年は日本のボランティア元年とされる。他者を思うことが自らをささげる社会行動の原点だ。風化に抗(あらが)う被災地へと思いを寄せることは、他者を敬う気持ちを広げることにもなるはずだ。