<金口木舌>まだ「投了」ではない


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 「居飛車」「振り飛車」と言えば将棋の二大戦法である。将棋に詳しくなくとも、字面を読めば駒の動きが何となく想像できそうだ

▼棋士にちなんだ戦法もある。「ゴキゲン中飛車」はその一つ。考案した近藤正和6段のにこやかな表情が由来という。それに対抗する戦法が、丸山忠久9段による「丸山ワクチン」。がんの治験薬にもちなんだ
▼戦法を学ぶなら将棋本が参考になる。最近では将棋ソフトが便利だ。コンピューターとプロ棋士の対局もたびたび話題になる。人工知能と百戦錬磨の棋士の真剣勝負は将棋ファンならずとも興味が湧く
▼昨年、対局中のソフト不正使用疑惑で将棋界が揺れた。日本将棋連盟は調査の結果、「不正の証拠なし」としたが、谷川浩司会長は辞任を表明した。ちなみに谷川九段の棋風は「光速流」。鮮やかな戦法は疑惑解明に生かせなかった
▼この人は戦術を誤り、進退窮まった。突然辞職した安慶田光男前副知事である。政府相手の丁々発止の陰で盤面の外に手を広げすぎたのか、採用試験と教育庁人事の口利き問題を引き起こした。当人や翁長雄志知事らの「事実はない」という釈明は何だったのか
▼対局を振り返る感想戦のごとく、最初から調べ直してはどうか。県議会2月定例会をにらみ野党諸氏も「次の一手」を練っている。説明がないまま副知事を辞めて投了では釈然としない。