<金口木舌>ほぼほぼやばい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「なるはやで回答いたします」。電話の相手の言葉に戸惑った。何年か前、東京の公的機関に問い合わせた際、若い職員が発した言葉がすぐにはのみ込めなかった。「なるべく早く」の略語だった

▼最近は「ほぼほぼ」という言葉が気になる。テレビだけではなく身近でも耳にするようになった。「ほぼ」の強調形だそうで、3年前からは一部の辞書にも登場している
▼「やばい」も従来は悪い意味でしか使わなかったが、若い世代はプラス評価の場面でも用いる。言葉は生き物だ。時代とともに変化するのは世の常で致し方ない
▼だが、事実を曲げてまで言葉を変えようとする政府の動きは見逃せない。南スーダンのPKO部隊が「戦闘」と報告したのを、稲田朋美防衛相が「武力衝突」と言い換える。現場の危機感は眼中にないようだ
▼文科省は「再就職」という名目で「天下り」をあっせんする手口を組織ぐるみで考え出していた。法務省は「共謀罪」を「テロ等準備罪」と衣だけ変えて提出する。思想・信条の自由を脅かすという問題の本質を突かれ、金田勝年法相はまともに答弁できない始末だ
▼しどろもどろの両大臣は「なるはや」で身を引いていただいた方がよかろう。閣僚の資質に欠けるのは「ほぼほぼ」どころではない。このままでは国民の生活、権利が脅かされ「やばい」。もちろん、旧来の意味で。