<金口木舌>今こそ立ち上がろう


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 沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが歌う「沖縄 今こそ立ち上がろう」を最後に聴いたのは昨年10月14日のこと。作家の池澤夏樹さんとヘリパッド建設反対運動の拠点である東村高江のテントを訪れた時だ

▼いつものように博治さんは腕を振って歌い、聴く者を鼓舞した。歌詞が胸に迫る。「いい歌だね」と池澤さんはつぶやいた。この歌に込めた沖縄の願いを政府は足蹴にする。3日後、山城さんは逮捕された
▼歌詞にある「戦世を拒み平和をまもるために」「島々の暮らしを守るために」は沖縄が追い求めてきたもの。「沖縄の未来は 沖縄が拓(ひら)く」は苦難の沖縄近現代史に根差した訴えであろう
▼1968年の反体制運動「パリ五月革命」で歌われた「美しき5月のパリ」が原曲である。日本では加藤登紀子さんの詞と歌唱で知られる。山城さんは歌詞を替え、高江や辺野古の闘いを盛り込んだ
▼2015年11月29日、加藤さんは辺野古で山城さんに会う。「勝手に歌詞を替えるのは失礼なこと」とわびる山城さんを「沖縄の歌に替えて受け継いでください」と加藤さんは激励した。そして一緒に歌った
▼捕らわれの身となって5カ月になる山城さんの初公判が迫った。あの声を聴きたい。歌い継ぐべき人に帰ってきてほしい。「今こそ立ち上がろう」と歌う自由を不当に奪うことは許されないのだから。