<金口木舌>スポーツ通し共生社会創造を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 いつでも、安心して一つのボールに夢中になれる。人種や障がいなどに関係なく、サッカーで触れ合う環境づくりへ。2014年5月、日本サッカー協会がグラスルーツ宣言で示した将来像だ

▼今年、日本フットボールリーグの大分に重度の聴覚障がいの選手が初めて入団し、関係者を喜ばせた。県内にも生まれつきの難聴で人工内耳を付け、サッカーで世界に挑む女子選手がいる
▼那覇西高2年生で、ヴィクサーレ沖縄FCナビィータの宮城実来さんだ。聴覚障がい者のデフサッカー日本代表に選ばれ、15日からの中国遠征で海外勢との交流試合に臨む
▼15年秋のデフフットサルワールドカップは、最年少の14歳でメンバー入り。3カ月ごとの合同練習を2年間続けて、つかんだ代表切符だった。前向きな姿勢は多くの人たちの手本にもなっただろう
▼今回は2度目の大舞台。経験を積む宮城さんでも、試合では相手が近づく音やボールの音が聞こえず、不安は多いという。何度も前後左右に首を振り、体を入れ替えて動くため、疲労も大きいようだ
▼3歳で人工内耳手術を受け、その後、言語訓練も繰り返した。口話を習得するためにやめていた手話の必要性も、最近は痛感している。宮城さんの一つ一つの挑戦を家族やチームメートが支え、自らの励みにもする。共生社会の広がりをスポーツは実感させてくれる。