<金口木舌>人間が招くクイナの危機


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 やんばるは、新緑の季節を迎えている。ブロッコリーのようなイタジイをはじめ、木々の若葉がもえる。この森でいま、ヤンバルクイナが激減している

▼「キョキョキョ」-。奥深い緑を抜ける道路で、姿は見えずとも、どこからか鳴き声が聞こえることがある。この森にすむヤンバルクイナだ。国頭村楚洲の住民は「数年前は毎晩あちこちから聞こえたが、今はほとんど聞こえなくなった」と話す
▼この地域では他より多くのクイナが確認されていたが、その数が4年間で約10分の1になっているというから驚く。環境省が鳴き声の数で調べた
▼大きな原因とみられるのが野犬の増加だ。ペットが捨てられ、野生化した可能性がある。クイナだけでなく、ケナガネズミなどの希少生物も襲われている
▼実は人にとっても脅威になっている。「注意 国頭村の山中で野犬の群れが出没」。村はちらしを作成し、身の安全を守るため、必要な時以外に山に立ち入らないことなどを呼び掛けている。林道で野犬の集団に襲われたり、追い掛けられたりしたとの情報が寄せられている
▼やんばるの森では、ことし夏に世界自然遺産登録に向けた国際自然保護連合の調査が予定されている。貴重な生態系が保護されているか厳格に審査される。野犬の問題は登録に影響しかねない。その責任は、捨てられた犬たちにではなく人間にある。