<金口木舌>主体的な学びとは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「先生は議論させて結論を言わなかった。『結論は一人一人の心の中にある。それを導き出せ』と言われたことが印象深い」。渡嘉敷村元教育委員長の吉川嘉勝さん(78)が、教え子からもらった手紙に、そう書かれていたという(7日付14面)

▼教育勅語の教材利用を否定しないとする閣議決定を受け、戦争を体験した元教員へのインタビューでの話。「集団自決」(強制集団死)を経験した吉川さんは戦後、教育の恐ろしさとは何か考え続けた
▼「集団自決」では、教育を受けた軍国少年や大人が加害者になった。吉川さんは、課題を解決できる人間を育てようと、道徳の時間、設定した題材について生徒に議論させた
▼「違和感があっても周囲に迎合」する日本の風潮を危惧した。「本質を突く議論ができるよう育てる」「批判力を育てる教育が重要」。その言葉には、絶対に過ちを繰り返してはならないという強い思いがにじむ
▼文部科学省の次期学習指導要領は、各教科の授業で「主体的・対話的で深い学び」の実現を促す。教員が一方的に話すのではなく、児童生徒が能動的に参加することを重視する
▼吉川さんが実践してきたことそのものだと思う。生きていく上では、簡単に答えの出ない問題の方が多い。平和な世の中をつくる力、そして人生を切り開く力をどう育てるかが、大人に問われている。