<金口木舌>性犯罪厳罰化の刑法改正案


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 韓国映画「トガニ」(2011年)は見ていてつらい内容だった。ろう学校で、教職員らが8人の児童に性暴力を繰り返していた実際の事件が題材。映画をきっかけに、13歳未満の子と障がい者への性犯罪は、時効を撤廃するなど法が改正された

▼韓国では女児が性犯罪の前歴がある男に暴行・殺害される事件が発生。その後再犯した加害者を電子位置情報で監視する「電子足輪法」が施行された。薬物投与や前歴者の情報公開も条件付きで法整備されている
▼日本でも性犯罪を厳罰化する刑法改正案が8日、衆院を通過した。改正されれば110年ぶり。ここに至るまでどれだけの被害者の涙と人生への諦めと、死をも考えるほどの苦しみがあったのかと思うと、遅過ぎる感もある
▼改正案は評価できる点もあるが、年少時の被害を、成人後に告訴可能にする公訴時効の停止は見送られた。暴行・脅迫の要件で「同意のない性行為」とする緩和を被害者らは求めていたが、かなわなかった
▼折しも先月、準強姦(ごうかん)被害を訴える女性が、素顔と実名を公表し会見した。警察で被害届の提出を思いとどまるよう説得させられるなど、被害者の支援体制の不十分さと理解不足を訴えた
▼性犯罪の告訴は氷山の一角だ。訴えづらい被害者の弱みにつけ込むことは許せない。いや「許さない」。それが性犯罪の抑止力にもなる。