<金口木舌>沖縄にプロ野球?


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 漫画「はだしのゲン」で、広島カープを語る場面がある。「ピカ(原爆)で夢も希望もなくして暗い気持ちの市民がつくったチームじゃけえのう。勝つことは市民も明るい気持ちにさせてくれるけえのお」

▼プロ野球は戦後最大の娯楽と言えるだろう。復興期の広島では、希望の星でもあった。沖縄でも高校野球を含めて野球熱は高い。それならば、と自民党が提言するのが沖縄を含むプロ球団の増設だ
▼一見夢のある話。だが昨年の1試合当たり観客数はセ・リーグが2万8千人、パ・リーグが2万2千人。1球場当たり140万~300万人が足を運ぶ。沖縄にそれだけの市場があるか
▼自民党の提言は地方活性化につながった大リーグに学ぶというが、ちょっと待った。リーグの収益を地方球団に分配する大リーグは共存共栄の思想が徹底している。親会社の穴埋めで経営が成り立つ日本では活性化以前に地方のチームは存続すら危うい
▼もっともらしく聞こえるが、実際は一時的に県民の歓心を買う机上の空論ではないか。思い出すのが名護市長選のときの「500億円基金構想」。うまそうな話ほど眉唾だ
▼庶民の娯楽に政治が口を挟むのはやぼというものだ。Jリーグやプロバスケ、成功するのは地域に根差すチームばかり。ゲンたちが愛した広島カープのような「市民のチーム」だからこそ応援しがいもある。