<社説>米軍でコロナ61人 全ての基地を封鎖せよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在沖米軍基地で7月7~11日に新型コロナウイルスの感染者が61人に上っている。前日の16人から11日は45人と約3倍に感染した。県は米軍普天間飛行場とキャンプ・ハンセンでクラスターが発生したとみている。

 問題は当事者である米軍が感染者の行動履歴やプロフィル、感染者や濃厚接触者の措置状況などを明らかにしないことだ。これらは感染拡大防止に不可欠な情報で、県民の命と健康に関わる問題だ。
 日米には感染症発生などの場合に米軍と県が情報交換するという覚書がある。にもかかわらず、必要最低限の情報すら出さないなら、全ての在沖米軍基地をロックダウン(封鎖)して米軍関係者の移動を止めるべきだ。県民を感染から守るにはそれしかない。
 日本では新型コロナの感染者が出た場合、都道府県がその当日に患者のプロフィルと行動履歴、感染経路、検査に至った経緯―などを公表する。そこから濃厚接触者を特定するなど疫学調査を行い、防止策につなげる。
 米国は感染者が300万人台で世界でも群を抜いて多く、各地で米軍関係者の感染者が相次いでいる。しかし米国防総省は3月、軍の運用能力を推測されないためとして、基地や部隊ごとのコロナ感染者数などの情報を発表しない方針を示した。
 日米が2013年に交わした覚書では、感染症などが判明した場合、海軍病院と地元の保健所で相互に通報することが定められている。しかし、県によると、感染者に関して全ての情報を得ているわけではないという。米軍が軍の運用を優先し、地域社会に情報を適切に開示しないのは、県民の命と健康を軽んじていると言わざるを得ない。
 夏の異動時期で多くの米軍関係者が来沖している。民間機で那覇空港を利用する人も多い。米海兵隊は海外から来た人は14日間の隔離措置を取っていると説明するが、その取り組みが徹底されているかどうか基地外から検証するすべはない。
 実際に独立記念日などに大勢が密集して騒いでいる様子が各地で目撃されており、日本人も参加していた。さらに米軍は地元に説明もせず基地外の民間ホテルを隔離施設にしており、地域の不安を生んでいる。
 米軍は両基地をロックダウンしたとしているが、コロナは嘉手納など別基地でも発生している。ロックダウンの対象は全基地だ。県は空港でのPCR検査を米軍関係者を含む来県者全員に実施するなど水際での発見に全力を尽くすべきだ。
 3月に嘉手納基地で3人が感染して以降、米軍は感染拡大を阻止できず、日本政府は米軍の方針を追認するのみだ。今、ここにある危機を招いたのは日米両政府の責任だ。日米はただちに情報の公開と疫学調査を実施し、感染を防がなければならない。