<社説>オスプレイ事故率 重大事故の危機自覚せよ


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 政府や米軍が喧伝(けんでん)する「安全性」は信用に値しない。即刻、沖縄の空から去るべきだ。

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの10万飛行時間当たりのクラスA(重大事故)の事故率が、普天間飛行場に配備された2012年の1・93件から、15年末時点で3・69件に増加したことを米海兵隊が明らかにした。
 わずか3年余でクラスA事故率が約2倍になった。政府は「一般に飛行時間の増加に伴い(事故率は)低減する」と説明してきたが、それとは逆のことが起きているのだ。
 民間機ならば同型機の飛行を止めるような異常事態だ。バッテリー発煙トラブルを起こしたボーイング787は原因を究明するために4カ月間、飛行停止した。これが航空機の安全運航を維持する上でのルールであろう。
 しかし、在沖米海兵隊は重大事故が起きてもオスプレイの飛行を続けてきた。政府はこのような無謀な飛行を見過ごしてはならない。住民の安全を守る観点から、飛行停止を米側に求めるべきだ。米軍機を特別扱いする理由はない。
 ところが、そのような強い姿勢が政府には皆無だ。そればかりか、オスプレイの安全性や事故率に対する関心の薄さが露呈した。
 防衛省が15年5月に公表したクラスA事故率は14年9月段階の2・12件であり、14年10月に北アラビア湾で発生した重大事故を反映した数値は公にしていない。同省は、既に発表したものから更新された数値は把握していないと答えている。事故率公表に及び腰では、「安全性」を説く資格はない。
 オスプレイをめぐっては隠蔽(いんぺい)や偽装が付きまとってきた。
 10年にアフガニスタンで起きた空軍のオスプレイ墜落事故で、「機体に問題があった」とする調査報告を「人為的ミス」に改めるよう軍上層部が圧力をかけていたと米誌が報じた。整備記録のミスなどの不適切な整備作業も米国防総省監査室の調査で判明した。
 配備に関しても、防衛省はSACO(日米特別行動委員会)の交渉の時点(1996年)から辺野古新基地へのオスプレイ配備計画を把握していたのに、16年間も事実を隠した。
 政府と米軍が住民の安全確保を軽視したままオスプレイの飛行が続けば、悲惨な事故が起きかねない。住民が重大な危機にさらされていることを厳しく自覚すべきだ。