<社説>児童性被害報告 包括的な支援を急げ


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 性犯罪への寛容さが児童に対する被害を助長している。国際社会は日本の現状を憂慮している。

 子どもの人身売買やポルノ問題を担当する国連のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ特別報告者(オランダ)の日本に関する報告書が公表された。昨年10月、沖縄を含む国内4カ所で児童買春や性犯罪について調査した。
 報告書は子どもたちの性の商品化が深刻な現状と、それに対して公的データがないなど、国の取り組み不足を問題視している。
 日本の性犯罪について「加害者の大半が罰せられていない。児童の性的搾取の根絶に向け、性犯罪を厳しく取り締まるなど包括的な施策と規定を策定すべきだ」と指摘した。政府は直ちに現状を把握し、国際基準を満たした包括的な被害者支援を急ぐべきだ。
 「『性産業はもうかる』『性犯罪は重罪ではない』という意識を変えることが重要だ」と報告書が指摘しているように、最終的には児童の性的被害を決して許さない社会をつくらなければならない。
 子どもの性的被害は後を絶たない。警視庁によると、2015年1年間に全国の警察が摘発した児童ポルノ事件の被害者は前年より159人(21・3%)多い905人で、統計を取り始めた2000年以降で最多だった。被害者の9割は女性だ。被害者のうち高校生と中学生がそれぞれ4割を占めている。
 ブキッキオ報告書は、沖縄での調査結果が反映され、貧困が児童の性被害と深く関連していることが示された。高い失業率と離婚率などによって「経済的な厳しさが続き、それによる家族の脆弱(ぜいじゃく)さ」が背景にあると指摘している。「児童の性的搾取に対する社会的な寛容さ」は沖縄でも同様で、加害者の大半は罰せられることがないことを問題視している。国の対応を待つのではなく、県独自の取り組みを強化すべきだ。
 さらに性的被害に遭った子どもたちの多くが「非行少女」とのレッテルを貼られることに疑問を投げ掛けている。被害者であることを無視され適切な支援を受けることができない社会はおかしい。問題は大人にあるからだ。
 児童への性的搾取根絶に向け(1)包括的な施策と規定の策定(2)児童の性的搾取の実態調査(3)専門性のある人材育成-など、勧告内容の早期実行を政府に求める。