<社説>参院選 アベノミクス 成否しっかり見極めたい


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 安倍政権が経済政策「アベノミクス」を打ち出して約3年半が経過した。安倍晋三首相は「アベノミクスを加速するのか、後戻りするのか。これが参院選の最大の争点」とする。経済の浮沈は暮らしや社会保障など国民生活に直結する。アベノミクスの成否をしっかり見極め、投票したい。

 円安によって輸出企業の業績は好調に転じたが、輸入食品などは値上がりし、家計を圧迫した。成果と副作用を併せ持つのがアベノミクスの特徴の一つだ。
 この間、多くの大企業が賃金を上げた。だが物価の影響を加味し、2010年を100とした実質賃金指数は12年の99・2から15年は94・6へと低下した。実質賃金が下がってはありがたみも薄らぐ。
 総務省の15年度個人企業経済調査では、商店などの卸売業・小売業の1事業所当たりの売上高は前年度比7・1%減と4年連続で落ち込んだ。業績好調の大企業とは対照的である。
 ことし4月には就業地別で見た有効求人倍率が初めて47都道府県全てで1倍を超えた。地方は人口減で求職者自体が減っている。一概に喜べるものではない。
 5月も1倍を超えたが、正社員の求人倍率が1倍を超えたのは8都県だけ。全国の有効求人倍率は1・36倍だが、正社員に限れば0・87倍でしかない。沖縄は0・35倍で最下位である。
 安倍政権は「雇用は110万人増えた」と胸を張る。全国の就業者数は12年の6270万人から15年には6376万人と確かに106万人増えた。一方で、正規従業員は36万人減り、非正規従業員は167万人増えている。雇用の質は明らかに低下しており、雇用が改善したとは言い難い。
 共同通信社が13年に実施した世論調査では、アベノミクスを評価する声が7割を超えたが、ことし5月下旬の調査では否定的な声が6割超に上った。安倍首相は「今やめれば停滞した時代に逆戻りだ」と訴える。
 だがアベノミクスが効果を発揮したなら、税率10%への消費税増税を2度も先送りする必要などないはずだ。「アベノミクスは道半ば」との安倍首相の訴えは「失敗」を「道半ば」と取り繕っていると言えないか。
 国民生活にアベノミクスはプラスか、それともマイナスなのか。後悔しない道を選択したい。