<社説>東京都知事選 一極集中是正の見識も問え


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 2020年の東京五輪開催地のホスト役、課題が山積する首都のかじ取り役は誰がふさわしいのか。舛添要一前知事の辞職を受けた東京都知事選が熱を帯びてきた。

 五輪開催費縮減や待機児童解消、高齢化への対応、2代続けて知事辞任の原因となった「政治とカネ」などの課題が都政に山積する。4年後に五輪を控えた首都の顔は特別な存在であり、その発信力は世界に及ぶ。
 候補者の将来ビジョン、指導力を踏まえ、政策本位の論戦を徹底し、有権者に明確な選択肢を示してもらいたい。
 その一方で、忘れてもらっては困る重要な課題がある。東京都は人口約1300万人、年間予算は13兆円に上り、職員は16万人を数える。国並みの規模がある地方自治体を率いる知事の職責には、時の政権に対し、地方自治の観点から物申す役割も求められていよう。
 総務省の人口動態調査によると、総人口は7年連続で減り、人口増は沖縄を含む6都県だけだった。東京は増加数、増加率が群を抜く。人口減は41道府県に上り、東京への一極集中が際立っている。
 五輪の開催費は膨らんでおり、国費の一端は沖縄県民を含めた地方に住む国民が負担する。「ブラックホール」と称されるほど、若者の流入が続く東京の繁栄の陰で地方の疲弊は深刻化している。国の望ましい発展の在り方にひずみが生じているのだ。
 安倍政権は、米軍基地問題で国の意にあらがう沖縄県や名護市を力で組み敷こうとする強権度を増している。都知事選の候補者は安倍政権下での国と地方の関係、地方創生の在り方を問い直し、東京一極集中の是正にどう取り組むのかを明確に語ってほしい。
 都知事選は、いずれも無所属新人でジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元総務相の増田寛也氏、元防衛相の小池百合子氏の事実上の三つどもえの戦いとなっている。
 鳥越氏は参院選の野党共闘を継承し、改憲に反対して安倍政権を正面から批判している。岩手県知事の実務経験もある増田氏は自民、公明などの推薦を得た政権与党側候補である。一方、小池氏は自民党から推薦を得られずに出馬した。自民党は分裂選挙となっている。
 前知事辞職から選挙までの期間が短く、知名度頼みの劇場型選挙になりかねない。地に足を着け、徹底的に政策を競ってほしい。