<社説>こども医療費助成 国は「現物給付」を認めよ


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 子どもの医療費を医療機関の窓口で立て替え払いせずに済む「現物給付」を、南風原町が来年1月にも実施する方向で県と調整している。実現すれば、子どもの健やかな成長や子育て支援の大きな力となり、保護者の負担感も解消できる。住民の安心につながる町の取り組みを高く評価したい。

 県内各市町村が実施する「こども医療費助成制度」は、診察時に保護者がいったん医療費を立て替えなければならない。後から戻ってくるとはいえ、立て替えが困難な保護者もいる。結果的に子どもの受診控えを招いては、制度の意義は薄らぐ。
 「現物給付」実現には、助成制度で2分の1を負担する県の補助要項を改める必要がある。他市町村が「現物給付」に移行しやすくするためにも、県の前向きな対応を望みたい。
 県外では、少なくとも37都府県が子育て支援の観点から「現物給付」を導入している。県内で導入した市町村はない。
 2014年度の県内市町村国民健康保険財政は37市町村で赤字である。それに加え、国は受診時に窓口で直接助成する市区町村に対し、国保の国庫負担金を減額する措置を取っている。県内で「現物給付」が進むわけがない。
 安易な受診増加による医療費の膨張を防ぐというのが減額措置の実施理由だ。だが、子育て支援の強化を打ち出した安倍内閣の方針に明らかに反する。
 県の調査では、23市町村が減額措置廃止を前提に「現物給付」を希望している。「利用者の利便性が高まる」と認識しながらも「現物給付」に踏み切れなかったり、希望しなかったりする状況は改善しなければならない。
 6月に閣議決定した1億総活躍プランは、減額措置について「見直しを含めて検討し、年末までに結論を得る」とした。国は対象年齢を0歳~小学校入学前に限定して一部廃止する方針とされる。
 これでは不十分である。国は減額措置を廃止し、市町村が助成対象とする全ての子どもの医療費の「現物給付」を認めるべきだ。
 南風原町の城間俊安町長は「本当の意味で貧困対策に取り組むなら現物給付が必要だ。これが実現できれば重病化に歯止めがかかり、結果的に医療費の抑制にもつながる」と述べている。国はその指摘を真摯(しんし)に受け止めてほしい。