<社説>県内ホテル人手不足 危機感持ち対策急ごう


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 早く手を打たなければ、観光立県に水を差すことになる。

 沖縄振興開発金融公庫の調査で、県内主要ホテルの大半が人手不足に悩み、9割がチェックインの遅れや長時間労働など業務への支障が出ていると回答していた。
 観光客が旅先で安心してくつろげるホテルは「おもてなし」の最前線に立ち、観光地のイメージを左右する重要な役割がある。深刻な労働力不足で県内ホテルのサービス維持が困難になりつつあるという危機感を持ち、対応を急ぐべきだ。
 沖縄公庫の調べでは、県内で2020年までに新規開業に伴う6千~8千の新たな客室整備が想定され、4千人以上が必要となる。人手不足が改善されなければ、新規開業の足かせになりかねない。
 ホテルの人手不足は、好調な県経済の足を引っ張る恐れがある。業界を挙げて、従業員不足解消に向けた具体策を、短期、中長期の視野で講じてもらいたい。県など行政の関わりも不可欠だ。
 正社員に関しては、約2割のホテルが、パート・アルバイトについては3割超が「大いに不足」と回答している。清掃など外注業務に携わる要員不足も3割近い。
 華々しく開業したものの、清掃が追い付かずに稼働する部屋数を大幅に減らしたホテルもある。7割超がチェックインや注文された食事の提供が遅れたと回答しており、食事メニューの簡略化に踏み切らざるを得なかったケースもある。
 沖縄に愛着があり、リピーターとして訪れた観光客が前回と違って低下した接客や食事のサービスに接していると感じれば、ホテルのみならず沖縄観光全体にマイナスイメージを抱いてしまいかねない。
 人手不足から長時間労働に陥る悪循環を断ち切らなければ、従業員の定着にも結び付かない。ホテル業界の構造的課題である。
 ホテル側は「効果が高い」取り組みとして自動精算や自動調理器の導入などを挙げている。待遇改善や共同の託児所開設など福利厚生の充実も含め、従業員の満足度を高める具体策を講じてもらいたい。
 県内ホテルを外国人留学生のアルバイトが支える実態があり、「外国人労働者の積極採用」を即効策に挙げたホテルが最多だった。「国家戦略特区」を活用した就労ビザ要件の緩和も選択肢となろう。県と業界が結束し、安定的な従業員確保に知恵を絞ってほしい。