<社説>オスプレイ飛行強行 墜落の恐怖強いる 命の「二重基準」許されぬ


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 県民の命を危険にさらすオスプレイの飛行再開は断じて許されない。墜落原因が不明なMV22オスプレイの飛行を強行した米軍、容認する政府に強く抗議し、改めて飛行停止と撤去を要求する。

 米軍は13日の墜落事故からわずか3日後に飛行再開を政府に通告、6日後に飛行を全面再開した。政府は「安全性確認までの飛行停止」を求めていたが、それを覆す無責任な飛行容認である。
 事故原因の徹底解明、それに基づく安全性の確認が反故(ほご)にされた。県民の生命の安全をないがしろにする暴挙と断ずるほかない。

首相は発言に責任持て

 安倍晋三首相はテレビ番組で「原因が究明されるまで運航をやめるよう米側に要請した」と言明した。にもかかわらず菅義偉官房長官は飛行再開を「理解できる」と容認した。モラルハザード(倫理欠如)は甚だしい。首相は自らの発言に責任を持つべきだ。
 稲田朋美防衛相は翁長雄志知事に「県民と国民が理解し安全ということがない限り飛行はやめるよう申し入れた」と明言した。それが一転、「空中給油以外の飛行再開は理解できる」と容認した。
 しかしこの見解は欺瞞(ぎまん)に満ちている。事故機は回転翼を前に傾けた「固定翼モード」で墜落した。オスプレイの元主任分析官は「ヘリモードで補給できない事実は、予期されなかった航空機の欠陥」と新たな構造的欠陥を指摘している。
 従来指摘されている軟着陸のためのオートローテーション機能欠如の影響を含め、事故原因が解明されたとは到底、言えない。
 防衛相が「空中給油訓練以外の飛行」を認めると強弁するなら、オスプレイの空中給油は全廃すると明言すべきだ。
 名護市職員は、給油ホースを出した空中給油機が米軍機と並んで市役所上空を何度も通過したと証言している。危険な空中給油が海域だけでなく市街地など陸域上空でも行われている疑いがある。
 防衛省の土本英樹審議官は佐賀県議会で「オスプレイ配備は安全確保が大前提」とし、佐賀では給油訓練を実施しないと述べた。審議官は来県し「安全確保のため沖縄でも給油訓練を実施しない」と約束すべきだ。
 陸自オスプレイ配備を予定する佐賀の県議会、市議会で防衛省幹部、職員は何度も参考人質疑に応じている。防衛省は墜落事故が現実となった沖縄でこそ県議会、地元議会の質疑に応じるべきだ。
 県民の安全を軽視する「命の二重基準」は許されない。

欠陥機は撤去すべきだ

 県民の猛反発が予想されながらの飛行再開は、ヘリパッド完成に伴い22日に迫る米軍北部訓練場の過半の「返還式典」と無関係ではなかろう。オスプレイを飛行再開させねば同訓練場のヘリパッドは無用の長物となるからだ。
 住民、県民に墜落の恐怖を強いてでもヘリパッドでのオスプレイ運用を優先する軍隊の論理と日本政府の追従姿勢が明らかだ。
 オスプレイの飛行再開、ヘリパッドの運用強行は県民の怒りの炎に油を注ぐことになろう。
 オスプレイ対応のヘリパッドは県内に69基あり、50基が伊江島や北部訓練場、中部訓練場(キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン)に集中する。米軍普天間飛行場の「オスプレイ墜落の恐怖」が本島全域で一層、強まる。
 東村高江区住民の中にはオスプレイの訓練激化を恐れ転居した家族もいる。本紙「声」欄に「伊江島飛行場、高江、辺野古(新基地)を結ぶ魔の三角形」の投稿が載った。オスプレイが縦横無尽に飛び交う恐怖を県民に強いる。
 金武町の小学6年女子児童は「きょうふ心いっぱい。オスプレイ事故の避難訓練をしないといけないのかな」と書いた。
 県民に恐怖と忍従を強いるオスプレイ飛行再開は許されない。構造的差別に基づき配備された構造的欠陥機は撤去させるしかない。