<社説>福島2号機高線量 廃炉工程を抜本的に見直せ


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 廃炉への道のりの厳しさをまざまざと見せつけられた。

 東京電力福島第1原発2号機のカメラ調査による映像の解析から、原子炉格納容器内部の放射線量が最大で毎時530シーベルトと推定された。その場に数十秒いただけで死に至るレベルだ。
 東電と政府は2021年に最初の原子炉で核燃料(デブリ)取り出し作業を始める考えだった。東電は自走式のカメラ付きロボットの投入を予定していたが、今回の調査結果で高放射線に機器が耐えられず十分な作業は難しいことが判明した。
 デブリが取り出されなければ廃炉は進まない。原発事故からもうすぐ6年になるが、いつ廃炉が完了するか不透明のままである。東電と政府は廃炉工程を抜本的に見直し国民に示すべきだ。
 福島第1原発事故で2号機は溶けたデブリの一部が、1、3号機は大部分が原子炉圧力容器の底部を突き抜けて格納容器に落ちたとみられている。
 30~40年に及ぶとみられる廃炉工程の中で、デブリ取り出しは最も重要な作業とされる。強い放射線を出すためデブリの回収は、ロボットなどを使って取り出す。非常に硬いデブリを遠隔操作で砕いて取り出す必要があり、さまざまな技術開発が必要となる。
 福島第1原発事故のように、格納容器内に落ちたデブリの回収は、世界でも前例がない。
 米国のスリーマイル島原発事故は、デブリが圧力容器にとどまっていたため遠隔操作によって取り出せた。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故は、デブリが拡散し取り出し困難として「石棺」と呼ぶシェルターで原発全体を覆った。
 今後、廃炉費用がかさむのは確実だ。福島第1原発の廃炉費用について政府は昨年、従来見込んでいた2兆円から4倍の8兆円に増大するとの試算を公表した。ロボット開発などに多額の費用がかかり、国民負担の拡大が懸念される。廃炉費用に実際にどれだけかかるか、いまだに見通しが立っていないと指摘する専門家もいる。
 政府は「原発は安価なエネルギー」と宣伝してきたが、事故によって雪だるま式に増える費用を国民に回すのは言語道断だ。安倍政権は原発を再稼働させている。再び事故が起きたらまた国民に負担させるのか。廃炉工程と同時にエネルギー政策の見直しが急務だ。