<社説>教員「過労死水準」超 過酷な職場放置許されない


この記事を書いた人 琉球新報社

 文部科学省が公表した2016年度の公立校教員の勤務実態調査結果で、教員の深刻な勤務実態が浮かんだ。学校内勤務時間が週60時間以上の教員が小学校で33・5%、中学校で57・7%に上った。

 週40時間までとする労働基準法に基づくと、60時間以上の教員は週20時間以上、月では80時間以上の時間外労働をしていることになる。「過労死ライン」はおおむね月80時間超が目安といわれている。小学校で3割強、中学校で6割弱の教員が「過労死」の恐れがある状態で勤務を続けている。由々しき事態だ。
 調査は小中学校の教員が長時間勤務を強いられている実態を明らかにするため、文科省が昨年度から5年に1度実施することを決めた。多忙を裏付ける数値を得て、教員増員のための予算確保を目指すのが狙いのようだ。調査で過酷な勤務実態が明らかになった以上、国は教員の勤務環境を改善する措置を早急に取る必要がある。
 経済協力開発機構(OECD)が12~13年に34カ国・地域の中学校教員を対象に実施した調査では、日本の1週間の勤務時間は53・9時間で、平均の38・3時間を大幅に上回った。50時間を超えたのは日本だけだ。
 日本の教員の勤務時間が海外より長くなるのには理由がある。学習指導が中心の海外に対し、日本はそれ以外に生徒指導や部活動、学校運営に関する事務作業も業務に含まれているためだ。
 本来は休みのはずの土曜、日曜の1日当たりの勤務時間も平均で小学校1時間7分、中学校3時間22分で、いずれも10年前の調査より増えている。部活動・クラブ活動が大きな要因だ。
 教員1人に課す仕事が多いままでは、勤務時間を減らすことは難しい。文科省は4月から外部人材を「部活動支援員」として学校職員に位置付け、指導や大会への引率が可能となるよう制度を改めた。教員が抱えてきた業務を別の人に担ってもらう取り組みをさらに進めてほしい。
 国が働き方改革を推進している中、教員の多くが過労死寸前の過酷な労働をしている状況を放置することは許されない。日本の次の世代を育てる大切な役割を担う教員こそ、真っ先に働き方を改革する必要がある。児童生徒と余裕を持って向き合える環境を確保するため、国は抜本的な制度改革を進める必要がある。