<社説>オスプレイ事故報告 「メーデー」は墜落の証拠


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 まさに墜落だ。なぜ日米両政府は認めないのか。

 昨年12月、名護市安部に墜落した米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落前、救助を求める救難信号「メーデー」を2回にわたり発していた。米軍の事故調査報告書に明記している。
 米側は「制御した緊急着水」と主張するが、メーデーとは機体が制御不能に陥ったことを意味する。明らかに矛盾する。事故原因をパイロットのせいにし、かたくなに機体の欠陥を認めない姿勢は異常だ。県民の生命を守るためには配備撤回を求める。
 報告書によると、墜落したオスプレイは、空中給油を何度か試みたが、MC130の給油口への接続は失敗。着陸燃料量の低下を受けて即時帰還の警報が出た。
 オスプレイはその後も接続を試みたが、MC130との正常な距離が保てず、給油口は揺れ、右プロペラに接触。回転翼の回転速度が低下し、バランスの取れた飛行ができなくなり、オスプレイは1度目の「メーデー」を発信した。その後も操縦室内の通信装置に異常がみられ、激しい揺れのためにバランスを維持できなくなり、2度目の「メーデー」を発した。
 オスプレイはヘリモードでは制御が不安定で、空中給油できないという構造上の欠陥を抱えている上、固定翼モードでも機体の前部に給油口と大きなプロペラがあるため、乱気流などで給油機のホースが安定せず接触すればプロペラを壊す危険性がある。
 制御された緊急着水ならローターなどの軽微な損傷であるはずが、報告書には左翼が見えず、操縦席が機体から垂直に曲がった様子の記述などもある。
 米国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏が指摘するように「着水後の損傷ではなく、『衝撃』を受けた後の全く制御されていない状態での墜落」であることは明らかだ。
 米軍の事故原因隠しは今に始まったことではない。
 1959年6月30日、石川市(現うるま市石川)の宮森小学校に米軍嘉手納基地所属のF100D戦闘機が墜落した。米軍は宮森小に墜落した原因を「エンジン故障による不可抗力の事故」と発表した。しかし、最大の原因は「整備ミス」だった。この事実が明らかになったのは事故から40年後だ。
 同型機の事故が多発していたことは当時、知られていない。米空軍によると、事故の前年に重大事故(クラスA)は168件、47人のパイロットが死亡している。
 宮森小の事故から2年後、同型機が具志川村(現うるま市)川崎に墜落した。その後も米軍は嘉手納基地に配備し続けた。オスプレイは8月にも墜落している。これ以上県民の命が不当に軽く扱われることは許されない。