<社説>国連委員会勧告 国際世論を沖縄の味方に


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 昔からそこに住む人たちの意思を一顧だにすることなく、反対の声を力でねじ伏せ、軍事基地を押し付ける。地元の人たちが大切にしてきた美しい海を、新たな基地建設のために埋め立てる。

 国が辺野古で進める米軍普天間飛行場の代替施設建設は、海外の目にはそう映るに違いない。
 国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告する「最終見解」を発表した。
 沖縄の民意を尊重するよう求めており、「辺野古」の文言は含まないが事実上、沖縄で民意を無視した新基地建設を強行する日本政府の姿勢に対し、警鐘を鳴らしたとみるべきだ。
 国連の場では、沖縄は独自の歴史、文化、言語を持った一つの民族としての認識が定着してきたといえよう。2008年には国連人権委員会が沖縄の人々を「先住民族」と初めて認め、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は2009年、琉球・沖縄の民族性、歴史、文化について固有性を指摘した。
 それに対し、国は沖縄を他県と同様に日本民族として、人種差別撤廃条約の適用対象にならないと主張している。
 沖縄はかつて琉球王国として栄え、他県とは違う独自の文化遺産、伝統的価値観を今なお持っている。明治政府によって強制的に併合され、日本の版図に組み込まれ、主権を奪われた。これは琉球の歴史から見れば、ほんの百数十年前のことだ。
 国は、他県ではおよそ考えられないことを沖縄に対しては平然と強いる。これが差別でなくて、何を差別というのか。
 歴史的経緯を踏まえ、国は人種差別撤廃委員会が出した最終見解に従い、真摯(しんし)に沖縄に向き合うべきだ。
 最終見解では、消滅の危機にある琉球諸語(しまくとぅば)の使用促進や保護策が十分取られてないことにも言及している。沖縄側の努力が足りないことは反省すべきだろう。
 自己決定権の核となるのがアイデンティティーであり、その礎を成すのは言葉だ。しまくとぅばを磨き、広め、自らの言葉で自分たちの未来は自分たちで決める権利を主張したい。
 国際世論を味方に付け、沖縄の主張を堂々と世界に向け訴えていこう。道理はこちらの方にある。