<南風>面白いことは「自分で創る」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 18歳で陸上を始め、没頭した20代。しかし30歳を過ぎたころから陸上競技に対する考えが変わってきた。「県記録保持者の走りをしなければならない」「負けたらどうしよう」「勝たなければ」。負けへの恐怖、失うことへの不安が募った。好きで夢中になって取り組んできたのに、自分のポジションを守る陸上、やらされている陸上へと変わっていったのだ。

 大会のわくわく感もなくなり、記録はどんどん低下。相次ぐ怪我、思うようにいかない身体と現実で、精神的に苦しい時期に突入した。スポーツ選手なら、誰もが経験する悩みかもしれない。
 そして35歳。気力の低下によって完全に燃え尽きたようになり、引退。最後のレースは決勝7位の惨敗だった。「もう走らなくていい」という安堵感。“陸上の呪縛”から解き放たれて嬉しいはずなのに、涙が止まらなかった。それでも「ありがとう」という感謝の気持ちで溢れていた。思えばたくさん笑って、たくさん悩んだ時期でもあったからだ。
 仕事でも勉強でも同じだと思うが、わくわくしながら向上心を持って行動すれば楽しくなるし、モチベーションも上がり継続できる。しかし、“やらされ感”で義務的にやっているなら単なる作業。苦痛でしかなく、ストレスになる。そのストレスは病気など、肉体的・精神的なダメージになっていく。完全に負のスパイラルだ。だから大事なのは自己マネージメント力、プラスのスパイラルを構築していくこと。
 面白さは探すのではなく、「自分で創る」。派手に引退セレモニーもさせてもらったが、37歳で再び現役復帰。気まずさはあったが、それを気にしない新たな夢、いや野望があった。前人未到、誰も到達していない領域への挑戦。現役復帰後、あの負のスパイラルはもう完全に消滅していた。
(譜久里武、アスリート工房代表)