<南風>未来につなぐもの


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 子供たちの声が教室に響きます。返事の良い子、返事だけ良い子、さまざまな子供たちに囲まれて、今年も放射線出前授業が始まりました。今年で3年目を迎えるこの授業も毎年、新たな問題が発生し、ひと筋縄では行かない教育の難しさを実感しています。

 例えば、今年の小学校1年生は、今年度中に7歳になる子どもたちです。東日本大震災のときは1歳か2歳、震災や原発事故の記憶がない子たちなのです。これまでは、東日本大震災という大きな地震で原発が壊れたため、私たちの家や学校や山々が放射能で汚されましたと説明できていたのですが、発電所の意味から説明せねばなりません。

 「電気を作る工場が発電所です。発電所を体に例えると、電気は『力』かな『熱』かな。ご飯は石油やガス、水といったもの。でもね、原子力発電所のご飯は?」。子供たちから「放射線」と声が上がります。すかさず、私が「残念、放射線はオナラ。みんなもご飯を食べるとおなかにガスが貯(た)まるよね、これが放射線」。

 子供たちとの問答は続きます。「では、原発のご飯とは、『核』というもの。原子爆弾もこの『核』を使って罪もない多くの人たちが殺されました。そして、この原発が壊れて出て来たオナラが放射線なんです」。機転の利く子からの質問は、「じゃ、うんちは?」。鋭い!私がうなります。「原発には、もちろん『うんち』もあります。核を燃やしてできたゴミが『うんち』なんだけど、きちんとしたトイレがないんだ。仮のトイレはあるんだけど、それが『おまる』。でもね、この『おまる』が地震で壊れて『うんち』が海に漏れたんだよね」

 いま起きていることを子どもたちに伝え、この子たちが将来、原発について真剣に考えてくれることを期待しています。
(木村真三、放射線衛生学者)