<南風>二重写しの情報発信


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2015年9月に縁があってWEB版「泡盛新聞」を始めることになった。ボクはフリーのライターとして30年ほど、プロフィルに「大衆食堂と沖縄そばと島豆腐と泡盛をこよなく愛す」と書き続けていたので、泡盛のことならだいたいのことは知っているつもりでいた。ところがいざ、いろいろ取材をしてみると泡盛のことを何も知らなかったんだと思った。

 もちろん泡盛の歴史や製造方法、各酒造所の主要銘柄、何十種類と飲んだ泡盛のそれぞれの味わいといった、いわゆる表面的な部分は知っている。しかし、なんでおいしいのか、なぜ造られ続け、愛され続けているのか。そういう本質な部分というか、根っこの部分を知れば知るほど、もっと知りたいという思いが強くなっていく。

 酒造所巡りや泡盛関連のイベントに参加して、各酒造所の営業担当者や製造担当者たちと話をすると、彼らの泡盛に対する思いや愛情が感じられる。そして、いかにして消費者に泡盛の良さを伝え広めるか、そのための取り組みなどを聞いているとその情熱がひしひしと伝わり、ボクには知るべきことはたくさんあるんだと思えたのである。

 より良い酒質の泡盛造りのために担当者たちの技術向上勉強会や泡盛シンポジウムなどに参加したことで、表面では分からない奥の奥の魅力を一層知ることができた。ライターとしてではなく、一人の泡盛ファンとしてますます泡盛好きになり、さらに多くの人に泡盛を知らしめたいと思えるようになっていた。

 泡盛新聞はまだできたばかりでメンバーも少なく、なかなかお金にはなりにくいけれど、新しい形で県内外や海外まで泡盛情報を発信することは、まるで三十数年前の「おきなわJOHO」を始めたころと、二重写しになって沖縄文化を発信する喜びを感じている。

(嘉手川学、沖縄ふうどライター、沖縄泡盛新聞編集委員)