<南風>私たちが地球に来た理由


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 久米島には、日本一のものがいくつかある。車エビや海ぶどうの養殖生産量。海洋深層水の取水量。砂浜だけの島・ハテの浜は、東洋一の美しさとも言われている。しかしそれらはさておき、私がナンバーワンだと思っているのは、海洋深層水の利活用を軸にした地域活性の「久米島モデル」である。

 海洋深層水は、海面近くの温かい海水との温度差を利用して発電ができる。また栄養豊富で清浄なため、水産養殖にも適している。冷熱効果を利用すれば、年間を通じた野菜のハウス栽培も可能だ。こうした利活用を組み合わせることで、新しい産業や雇用が生まれ、エネルギーも自給できる自立型コミュニティー、それが「久米島モデル」だ。

 国際協力NGOに勤めていた2012年、ブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」に参加した。約190の国と地域から首脳や民間団体などが集まったこの会議では、経済成長と環境保全を両立させる方策について話し合われた。ただ、先進国と途上国の意見が分かれ、具体的な計画について各国が足並みをそろえることの難しさが浮き彫りになった。

 3日間の会議の最後、当時のウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ氏が、経済発展ばかりを追求する消費主義社会に警鐘を鳴らした。彼のスピーチの中で一番心に残ったのが、「私たちは発展するために生まれてきたのではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです」という言葉だった。

 不安定化する世界において、これからはかつてのような極端な開発や経済成長を目指す時代ではない。それよりも小さなコミュニティーにおいて、自然資源を損なうことなく、いかに人々の幸せな暮らしを実現するか。そのヒントが「久米島モデル」にあると思う。(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)