嘘も通せば誠に 映画「英雄は嘘がお好き」 シネマパレット公開中


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 「私は詐欺にあったなどと思ったことはない。彼との幸せな時間は今でも私の宝物です」とほほ笑むのは、海の向こうに住む大富豪の夫人・ポリーヌだった。

 さて、映画の中の嘘(うそ)つき男はヌヴィル大尉。ボーグラン家の次女ポリーヌに求婚したその場で戦争へ召集されてしまうが、毎日手紙を書くと約束し、さっそうと馬上の人となる。

 嘘つきヌヴィルの本性を見抜いていた姉エリザベットは、傷心の妹のために大尉の活躍話をでっち上げ、最後は名誉の戦死までを書き上げて手紙にする。ところがだ。この嘘つきヌヴィルが戻ってきたのだ。

 フランスのロマンチック・コメディーは甘いだけでなく、スパイスも程よく効いている。嘘も方便から出発した姉の“ヌヴィル大尉大活躍”の舞台は、真実かのように演じるヌヴィルも加担し、周りの人たちを笑顔にしていく。

 件(くだん)の事件も世間が世紀の結婚詐欺とやじ馬で騒ぐ中、億単位で貢いだ夫人だけは幸せそうだった。「知らぬが仏」と揶揄(やゆ)されようが、つき通せば嘘も誠になるというコメディー。

(スターシアターズ・榮慶子)