【詳報③】沖縄県知事選 クロス討論で火花 それぞれがぶつけた質問とその回答は? 立候補予定3氏座談会


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(左から)玉城デニー氏 佐喜真淳氏 下地幹郎氏

 9月11日の沖縄県知事選投開票日が1カ月後に迫る中、琉球新報社が11日に開催した立候補予定者による座談会で、現職の玉城デニー氏(62)と、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(60)が一堂に会して初めて議論を交わした。2週間後に迎える選挙戦突入を前に、3氏とも白熱した舌戦を展開した。


クロス討論

下地氏から―辺野古埋め立てられた責任は → 玉城氏 政府姿勢こそ問われる

佐喜真氏から―普天間返還に向けた道筋は → 玉城氏 辺野古切り離し閉鎖へ

 下地氏 辺野古は30%近く埋められている。辺野古の海を埋め立てさせない、一粒たりとも土砂を入れさせないと言い切ってきたが、政治的な責任をどう取るか。

 玉城氏 軟弱地盤などの問題があり、国が出した変更承認申請を昨年11月に不承認とした。軟弱地盤の工事もできなければこの基地は完成しない。2014年、18年の知事選で翁長雄志氏や私が新基地建設阻止に全力を尽くすと訴え、当選した。そこには新基地建設を止めてほしいという県民の強い願いが表れ、県民投票の結果でも示されている。県民の民意を一顧だにせず基地建設を強行する政府の姿勢こそ問われなければならない。

 下地氏 反対、賛成は誰でも簡単だ。玉城氏に託されたのは止めるということ。それができない知事としての責任は。

 玉城氏 変更承認については不承認という判断をしたので、そこでは工事はできない。最後まで埋め立てを止めるということについて、真摯(しんし)に努力を重ねていく。

 佐喜真氏 辺野古新基地を造らせないという公約を掲げたが、国との訴訟で一度も勝っていない。普天間飛行場の返還は遅れるばかりだが、返還に向けた道筋は。

 玉城氏 稲田元防衛相は条件が満たされない場合、普天間は返還されない可能性があると国会で明言した。現在の日米合意では返還されない可能性が残されている。しかし普天間の危険性放置は許されない。辺野古と切り離し、直ちに運用停止し、閉鎖返還すべきだ。SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意に関して沖縄を加えた協議を提案している。

 佐喜真氏 危険性の除去や基地負担軽減について政府だけの責任にしている。(訴訟に)勝てる要素はあるのか。

 玉城氏 裁判中なので結果へのコメントは非常に難しいが、行政不服審査制度をとっても100人以上の行政法学者がおかしいと明確に言っている。それを政府に要求するのは当然の要求だ。取り得る手だては全てやると言っている。
 

 

下地氏から―統一教会関連、台湾旅費領収書示せ → 佐喜真氏 自費での支払いは事実

玉城氏から―建白書から政治姿勢を変えたのか → 佐喜真氏 普天間危険除去が主眼

 下地氏 参院選で支援した古謝玄太氏は旧統一教会から支援などを受けてなかったか。佐喜真氏が(同会の関連団体「世界平和大使協議会」の催しに参加した)3年前に台湾に行った際の旅費領収書を示すべきだ。

 佐喜真氏 私は参院選の候補者と常々一緒にいる訳ではない。候補者である古謝氏に確認をすればいい。私と旧統一教会との関係は、報道の中で誤解を招く話もあった。私も反省し、今後一切、今もだが一線を画した。誤解を招いたことは真摯(しんし)に、多くの方々におわびしたい。台湾訪問は3年以上前の話だ。旅費は私自身が私費で払った。領収書などは存在したか記憶にない。自費で払ったことは事実として認めてほしい。

 下地氏 佐喜真氏と古謝氏はパッケージで選挙戦を展開しているので関係を聞いている。収支報告書には、別の旅行については書かれていた。明確にすべきだ。

 玉城氏 佐喜真氏は辺野古新基地建設を容認した。普天間基地の閉鎖・返還、県内移設断念を盛り込んだ建白書に宜野湾市長として署名したが政治姿勢を変えたのか。危険性の放置はどう考えるか。

 佐喜真氏 基地反対だけを訴え普天間基地の危険性除去を放置しているのは現県政だ。私は政府との信頼関係を活用し、普天間飛行場の機能を県外の飛行場、もしくは既に一部埋め立てられた辺野古沿岸部を活用し部分的・暫定的な移駐も行いたい。建白書はオスプレイ配備反対と普天間飛行場の危険性除去が主眼だったと理解している。市長として共感し訴えてきた。基地問題を今回の知事選で終わらせたい。

 玉城氏 県内移設断念を盛り込んだ建白書の点についてはどのように考えているのか。

 佐喜真氏 知事は自身の責任を問うていない。基地負担軽減と危険性の除去は、松川正則宜野湾市長が、現県政に対して、何一つやってないと明言している。責任感をもって対応すべきだ。この問題について終止符を打つことが知事としての役割だ。それができるのは私だと理解している。
 

 

玉城氏から―普天間軍民共用化は前進なのか → 下地氏 民間での利用メリット

佐喜真氏から―規制緩和、国との信頼どうする → 下地氏 知事権限で財源つくる

 玉城氏 辺野古は当初は嘉手納統合を主張し、郵政民営化担当相では辺野古を容認。今回は普天間は軍民共用化と主張する。基地が居座り続け、前進ではないのでは。

 下地氏 辺野古に賛成せず自民党を離党した。郵政相は民主党政権で移設に賛成し、閣内一致を容認した。苦渋の選択で、玉城氏も私も一緒だ。軍民共用も普天間の危険を除去することには変わらない。民間空港で使うことは宜野湾の方々にもメリットがある。負の遺産が雇用・税金を生み出し、地域経済にも貢献する。経済損失にはならない。

 玉城氏 民主党政権は辺野古を認めたが(私は)最後まで反対を主張し民主党を除名になった。姿勢は覆していない。

 下地氏 あの時、辞めた最大の理由は消費税だったのでは。消費税をやるかやらないかが政局になって。亀井静香氏と小沢一郎氏の戦いの中で、あの状況になった。皆さんが辞めるときの理由の中に、辺野古の話は一切出てきていない。

 佐喜真氏 「国と決別する」との発言があった。規制緩和・教育無償化などで法律制定や各省庁との調整など、国との信頼関係醸成が基本だ。どのようにするのか。

 下地氏 10年間で自民党が1千億円近くの予算を切った。基地政策で予算を国が差配する仕組みを皆さんの政党が作った。国に頼らない沖縄をつくらないと、経済は発展しない。

 知事が持てる権限で規制緩和をしたい。国が予算を減らしても子どもの貧困や困窮世帯などへサポートする。教育無償化・離島対策も工夫して財源をつくる自信はある。

 佐喜真氏 「国には頼らない。決別する」ということは、国のお金は要らないという理解で良いのか。

 下地氏 「決別」という表現を「国から1円ももらわない」と解釈する方がおかしい。自分たちの力を付けていくということだ。全てを(国に)頼ることを止めると言っている。制度設計の中で、県が手を挙げてもらうべき予算はいくらでもある。
 


出席者

 玉城デニー氏(62)(現職)
 佐喜真淳氏(58)(前宜野湾市長)
 下地幹郎氏(60)(前衆院議員)

 司会 島洋子(琉球新報編集局長)

 

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