「民主主義否定する暴挙」 シールズ、辺野古で抗議声明


この記事を書いた人 金城 美智子
辺野古新基地建設で政府の手続きを批判するシールズ。「シールズ琉球」から玉城愛さん(左から2人目)、元山仁士郎さん(同3人目)が参加した=6日、参院議員会館

 【東京】安全保障関連法などに反対する学生らのグループ「SEALDs(シールズ)」は6日午前、参院議員会館で記者会見を開き、米軍普天間飛行場の辺野古移設を強行する政府の政治的手続きは「民主主義の根幹を否定する暴挙」だとして、抗議声明を発表した。

 声明文は翁長雄志知事による埋め立て承認の取り消しに対して沖縄防衛局が「一般私人」の立場と同等だとして審査請求と執行停止申し立てを国土交通省に提出したことについて、「国家の専横から国民の権利利益を守るための制度である行政不服審査法の恣意(しい)的な乱用」と強く批判。米軍による土地接収が続けられてきた沖縄の歴史に触れ、新基地建設について「沖縄の長い平和のための闘いを踏みにじるものであり、日米安全保障のための負担を沖縄に今後も押し付けるという国家からの宣言であるとさえ言える」と難じた。
 記者会見には県内団体「シールズ琉球」から玉城愛さん、元山仁士郎さんが参加。玉城さんは辺野古のゲート前で過剰な警備により、けが人が出ている現状などを報告し「新基地建設は沖縄県だけの問題ではなくて、日本、世界の人たちの命を奪いかねないきっかけとなる。みんなで考えるべき問題ではないか」と訴えた。シールズは13日から全国各地で街宣運動を実施し、辺野古新基地建設反対を訴える考え。

【抗議文】
 辺野古新基地建設をめぐる一連の政治的手続きに関する抗議声明
 沖縄・辺野古の新基地建設工事が再開されました。2015年10月13日に翁長雄志沖縄県知事が行った辺野古沿岸部における公有水面埋め立て承認の取り消しに対し、その翌日、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申し立てをしました。そして10月27日、国土交通大臣が執行停止を命じたのが、新基地建設工事再開の根拠となっています。
 しかしこの審査請求は、沖縄防衛局という国家の一機関が「一般私人」を名乗りながら、同じく国の行政機関である国土交通大臣に宛てたものです。これは国家の専横から国民の権利利益を守るための制度である行政不服審査法の恣意(しい)的な乱用であり、すでに多くの行政法学者から批判の声明が出ている通り、法治国家にもとる行為です。さらに、今回の埋め立て承認取り消しを行った翁長知事は、党派や思想信条を超えた「オール沖縄」のもと、「新基地は造らせない」ことを公約とし沖縄県民の圧倒的支持をうけて当選しました。その知事の措置を国家がこのような不公正な手段をもって斥(しりぞ)けるということは、憲法の掲げる地方自治の原則を蔑(ないがし)ろにするものであるとともに、民主主義の根幹を否定する暴挙です。
 沖縄は、これまでも構造的な差別と言う現状のなかにありました。国土面積のわずか0・6%の小さな島に在日米軍専用施設の74%が集中するなど、日米同盟の過剰な負担を負わされています。また、不平等だと指摘されている日米地位協定もいまだに改正されておらず、米軍・軍属による事件・事故は解決されないままです。一方、住民を含む凄惨(せいさん)な犠牲を出した沖縄戦、米軍による土地接収である「銃剣とブルドーザー」などを経た沖縄では、反基地・反戦運動が非暴力を通じて行われてきました。今回の新基地建設工事の再開は、こうした沖縄の長い平和のための闘いを踏みにじるものであり、日米安全保障のための負担を沖縄に今後も押しつけるという、国家からの宣言であるとさえ言えるでしょう。
 辺野古での新基地建設をめぐる日本政府の横暴は、沖縄だけにとどまらない、日本全体の問題です。今なお国会を通じて沖縄に過剰な基地負担を強いているのは、紛れもなく「日本」に生きる私たち自身です。そして、特定秘密保護法や安保法制の整備といった安倍政権のもとに行われている政治が、この国の自由と民主主義、そして平和主義を著しく傷つけるものであったことからも、沖縄の直面している問題が全国の人々にとって決して他人事でないことは明らかです。沖縄がこの国に問うものは、この国の憲法の理念であり、この国の政治であり、「日本」に生きる私たちの行動です。
 私たちはこの国の自由と民主主義を守るという立場から、今回の辺野古埋め立てに関する一連の政府の手続きに反対します。そして、辺野古新基地建設工事の中止を求めるとともに、このような暴挙を粛々と進める現政権へNOを突きつけます。
2015年11月6日
SEALDs
SEALDs KANSAI
SEALDs TOHOKU
SEALDs RYUKYU
SEALDs TOKAI

 【琉球新報電子版】