「史上最強」千葉Jを相手にした心境とは キングス岸本が語る優勝の舞台裏 「次の目標は連覇」


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インタビューに答える琉球ゴールデンキングスの岸本隆一選手=5日、沖縄市の沖縄アリーナ(小川昌宏撮影)

 プロバスケットボールBリーグで琉球ゴールデンキングスの初優勝に貢献した岸本隆一(33)=名護市出身=が5日、琉球新報のインタビューに応じた。念願の優勝トロフィーを手にして「うれしいの一言に尽きる」と笑顔を輝かせる。すでに2023―24シーズンの契約継続も決まっており「(次の目標は)連覇すること」と断言した。

 5月27、28の両日に開催されたチャンピオンシップ決勝では、キングスの持っていたリーグ連勝記録を塗り替え、今季の最高勝率をマークした千葉ジェッツと対戦した。強敵を相手にキングスは2連勝で栄冠をつかみ「ファンの支えが心強かった。それなしには優勝はあり得なかった」と感謝した。

 プロバスケットボールBリーグ2022―23シーズンの年間王者を決めるチャンピオンシップ決勝で、琉球ゴールデンキングスが立ち向かった相手は「史上最強」と評される千葉ジェッツだった。天皇杯も制した強敵との頂上決戦に、岸本隆一(33)は「チャレンジャーの気持ちで、試合が楽しみという感覚の方が強かった」と当時の心境を振り返る。

 試合前は「圧倒的に千葉J優位」と予想されていた。千葉Jは攻撃力・守備力でリーグトップクラスの数字を残しており、司令塔の富樫勇樹を中心に日本人、外国籍ともに能力の高い選手がそろっていた。岸本は「僕たちが勝つと想像していた人は多くなかったはずだ」と認める。それでも「(キングスは)シーズンを通して、正しいプロセスを踏んできたという自信があった。シーズンの積み重ねが決勝では生きてくると確信していた」。

キングス―千葉J 再延長、千葉Jの富樫勇樹(右)を抜き去るキングスの岸本隆一=5月27日、横浜市の横浜アリーナ(小川昌宏撮影)

 5月27日の決勝第1戦は40分の試合時間内で決着がつかず、延長、再延長までもつれ込む大激戦となった。互いに一歩も譲らない緊迫した試合展開だったが、岸本は「不思議と焦りはなかった。負ける気がしなかった」と言う。キングスの粘り強さ、勝負どころをかぎ分ける嗅覚など、長いシーズンを通して培ってきた力が大舞台で発揮できたと感じている。

 今季のキングスは強豪ぞろいの西地区で苦戦し、一時は4位まで順位を落とすこともあった。岸本は「自分たちの進んでいる道が正しいのか不安に思う時期もあった」と明かす。結果を残さなければいけないという焦りからチームが不安定になり、思い切ったプレーができなくなることもあったという。それでも「コーチ陣は動揺することがなかったので、チームが必要以上に落ち込むことはなかった。コーチも選手も、いいコミュニケーションを取り続けることで(苦境を)乗り切れた」と話す。

インタビューで笑顔を見せる琉球ゴールデンキングスの岸本隆一選手=5日、沖縄市の沖縄アリーナ(小川昌宏撮影)

 悔しい敗戦や我慢し続けて勝利する試合をチーム全員が経験し、苦境を克服したことで、決勝の舞台では「みんなが楽しみながらプレーできていた」と感じている。接戦となった第1戦を3点差で勝ち切り、勝てば優勝が決まる5月28日の第2戦は、「みんなが目の前のことに100%集中できていた。一人一人が責任を持ってプレーしていた」。ベンチメンバーの躍動もあって15点差で快勝し、試合後にはキングスの選手たちの笑顔がコートに輝いた。

 決勝の2日間は沖縄からも多くのファンが駆け付け、チームに声援を送った。岸本は「自分たちのペースで試合を進められたのは、会場で応援してくれた方々がいい雰囲気をつくってくれたから。(ファンの力は)自分たちの武器に近い」と確信する。

 念願のリーグ優勝を果たし、来季は追われる立場となる。岸本は「大変なシーズンになると思うけど、その分、いかに楽しめるか自分なりにフォーカスしたい」と力を込める。再びリーグの頂点に上り詰めるために、「誠意を持って全力で取り組みたい」と決意を新たにした。

(平安太一)