安倍首相あいさつ(全文) 米軍犯罪、早急に対策


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 安倍晋三首相

 「平成28年沖縄全戦没者追悼式」に臨み、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠をささげるとともに、御遺族の方々に、深く哀悼の意を表す。

 71年前、ここ沖縄の地は、凄惨(せいさん)な地上戦の場となった。20万人もの尊い命が失われ、何の罪もない市井の人々、未来ある子どもたちが、無残にも犠牲となった。沖縄の美しい海や自然、豊かな文化が、容赦なく壊された。平和の礎に刻まれた方々の無念、残された人々の底知れぬ悲しみ、沖縄が負った癒えることのない深い傷を思うとき、ただただ、こうべを垂れるほか、なすすべがない。

 祖国の行く末を案じ、愛する家族の幸せを願いながら、戦争のために命を落とされた方々。その取り返しのつかない犠牲、そしてその後に沖縄が忍んだ苦難の歴史の上に、今、私たちが享受する平和と繁栄がある。今日は、静かに目を閉じて、そのことをかみしめ、私たちがどこから来たのか、自らに問う。過去と謙虚に向き合い、平和な世界の実現に向けて不断の努力を続けていく、その誓いを新たにする日だ。

 同時に、私たちは、戦後70年以上を経た今もなお、沖縄が大きな基地の負担を背負っている事実を重く受け止めなければならない。私たちは、今後とも、国を挙げて、基地負担の軽減に、一つ一つ、取り組んでいく。

 そうした中で、今般、米軍の関係者による卑劣極まりない凶悪な事件が発生したことに、非常に強い憤りを覚えている。米国に対しては、私から、直接、大統領に、日本国民が強い衝撃を受けていることを伝え、強く抗議するとともに、徹底的な再発防止など、厳正な対応を求めてきた。米国とは、地位協定上の軍属の扱いの見直しを行うことで合意し、現在、米国と詰めの交渉を行っている。国民の命と財産を守る責任を負う、政府として、二度とこうした痛ましい犯罪が起きないよう、対策を早急に講じていく。

 アジアとの玄関口に位置し、技術革新の新たな拠点でもある沖縄は、その大いなる優位性と、限りない潜在力を存分に生かし、現在、飛躍的な発展を遂げつつある。私たちは、今を生きる世代、そして、明日を生きる世代のため、沖縄の振興に全力で取り組み、明るい未来を切り開いていく。そのことが、御霊にお応えすることになる、私はそのことを確信している。

 結びに、この地に眠る御霊の安らかならんこと、ご遺族の方々のご平安を心からお祈りし、私のあいさつとする。