【島人の目】オバマ大統領のレガシー


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 2011年9月、わが町に来たオバマ大統領の演説を幸運にも拝聴した。笑顔でさっそうと登場したオバマ氏の細身の姿に思わず「カッコイイ」とミーハー全開。8千人の聴衆の前での演説に会場は、大きな声援と割れんばかりの拍手で熱気にあふれていた。

 だが今、テレビのオバマ氏は御髪(おんぐし)は白髪、精彩を欠き以前のようなオーラが感じられない。人気は低落し業績、指導力などを総合した歴代大統領ランキングでは、ワーストだとの調査も。まさかあのブッシュ前大統領よりも? そんなことはないはずだ。オバマ氏は、政治の荒波に立ち向かいながらかなりの業績を挙げている。

 「経済無策」と言われているが、リーマンショックの不況の下で景気対策法案を可決させ、軍事費歳出削減、公共事業の拡大、個人企業への減税を実施。失業率は10%から今では5%を切っている。

 移民制度改革に取り組み、福祉の充実を図りさらに医療保険改革法を実現させ、同性愛婚も認めた。それは、オバマ氏が無名の頃シカゴで貧困層の草の根の社会活動をし社会的弱者、マイノリティーへの配慮をポリシーとしているからではないか。

 一番の功績は何といってもブッシュ政権下のイラク戦争を批判して、イラクとアフガンへの軍事関与を終わらせるという公約を守ったことだ。「米国はもはや世界の警察ではない」と言い切ったオバマ氏は「軍事力が唯一の選択肢ではなく第一の選択肢でもない」とあらゆる創造力を使い、ミサイルより経済制裁や外交での解決方法を模索したのである。

 何より若い米兵の命をないがしろにしなかった。戦争を避ける事が「弱腰外交」だとか「米軍撤退計画を見直し、強いアメリカを再び」と叫ぶ反オバマ陣営は、また無意味に若い尊き命を散らそうとしている。

 「一つのアメリカをつくれなかった」と反省を口にするオバマ氏であるが、残りの在任中にぜひ銃規制実施を実現させてほしいものだ。
(鈴木多美子、米バージニア通信員)