『誰がこの国を動かしているのか』 日本政治の暗部明かす


社会
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『誰がこの国を動かしているのか』鳩山友紀夫、白井聡、木村朗著 詩想社・994円

 4年前、石原慎太郎元東京都知事が、尖閣列島を都が買収すると放言していたずらに中国を刺激し、「中国脅威論」を引き出した。その後、沖縄南西諸島への自衛隊派遣が現実化、集団的自衛権の行使容認の閣議決定、安保法制の強行採決、と安倍内閣は憲法無視の「戦争できる国へ」、議会内多数による反民主主義、逆走政治を強行している。

 辺野古の米軍新基地建設は、60年代からあった米国の野望だが、沖縄に対する人権無視の侵略的攻撃は、日本側の無関心を基盤にしている。この本は、普天間基地を「最低でも県外へ移設する」との発言によって、総理の座から引きずり降ろされた鳩山由紀夫に、日本平和学会理事の木村朗と政治学者の白井聡とが、日本政治の暗部について聞いた貴重な記録である。

 1993年の細川政権、2009年の鳩山政権は、対米自立、脱官僚政治を目指し、鳩山はEUに倣った「東アジア共同体」を構想していた、とする木村の質問に対して、鳩山はこういう。「官僚たちの対米従属、あるいはアメリカの意向であるかのように装いながら自分たちの意向で物事を進めていくという構造は極めて根が深く、出世の道もそれによって決まるほどのものでした」

 白井は、この構造を「対米従属利権共同体――大メディアはその一角」というのだが、鳩山は、「安倍政権のもとで日本が中国にも韓国にも、ましてアメリカにも好まれていない国になってきている」と心配している。アメリカの軍事政策に支配されながら、ナショナリズムを煽(あお)る安倍政治は、破綻を目前にしている。日本はいまや卑劣な「従属的軍事大国」となりつつある。

 それを主導する安倍首相には特有の「劣等意識のはけ口」「立派な人間として認められたいという意識」がある、と鳩山は規定している。卑小な人間が英雄主義に陥る錯乱は、ドイツの歴史で証明済みだが、この従属しつつ大国を粧(よそお)う錯誤は、もっとも迷惑な「亡国の演技」といえる。(鎌田慧・ルポライター)

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 はとやま・ゆきお 元内閣総理大臣。東アジア共同体研究所理事長。2012年、政治活動名を「由紀夫」の表記から「友紀夫」に変更した。

 しらい・さとし 社会学博士。日本学術振興会特別研究員などを経て現在は京都精華大学人文学部専任教員。

 きむら・あきら 鹿児島大学教員。日本平和学会理事。平和問題ゼミナールを主催。

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