大神島「おぷゆう食堂」 伝統と魅力保存へ模索 「島がなくならないように」


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自分で採ってきたナマコの仕込みをする大浦高儀さん=11月22日、宮古島市の大神島

 【大神島=宮古島】世帯数15、人口約30人で存続の危機にひんしている大神島。大浦高儀さん(69)=大神島出身=は島で唯一の食堂兼民宿「おぷゆう食堂」を営む。沖縄本島で勤めていた会社を退職後、親の介護で帰省した際に、高齢化が進む島の将来を危ぶみ食堂を始めた。「島を何とかしないといけない」との思いを抱き、伝統と魅力を残した上での存続を模索する。

 大神島は宮古島の北東約4キロに位置する。祖神祭(ウヤガン)などの祭祀(さいし)に代表される「祈りの島」としても知られる。人口流失に歯止めが利かず、現在は最盛期だった1950年代の6分の1ほどだ。

 大浦さんは長年本島で会社勤めをしていた。退職後は本島で事業を立ち上げようとしたが、母の介護のために家族を残して島へ一時帰郷した。帰ってみると若者はほとんどおらず、将来的に存続が危ぶまれるほどになっていた。

 大浦さんは「島には何もなかった。定期船で来た観光客は水も飲めない。若い人のために島を活性化できる店が必要だと思った」と振り返る。

大神島で唯一の食堂兼民宿の「おぷゆう食堂」

 大浦さんは2013年4月、廃校となった小中学校の教職員宿舎跡地を役所から買い取って「おぷゆう食堂」を開業した。島に関して誤った情報がインターネット上で流されていることを懸念し、島で初めてのホームページ(HP)を立ち上げた。

 旧暦1月から11月にかけて毎月開催されるウヤガンの際は、神事に携わる者以外は立ち入ることができない場所があることなどを周知した。

 大神自治会は島外の人が島の土地を購入することを禁止している。祭事を厳かに執り行うためだ。事実上、移住は許されていない。

 大浦さんは「それほど観光地化はしたくない。島の魅力は素朴で何もない点だ」と語る。小さな島では大規模に耕作できる土地はなく、自らも釣りに出て食材を確保する日々だ。

 大浦さんは数年後、家族が住む沖縄本島へ戻る予定だ。その時までに、島が自立していけるように環境整備を続ける。「食堂は島がなくならないように、若い人が協力して続けてくれればいい。島はこの先もなくならない。それは心配してはいない」

 島の行く末を案じつつ、次世代の若者に期待を抱く。(梅田正覚)