『沖縄 伝説の歩きかた』 小旅行の“相棒”にお勧め


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『沖縄 伝説の歩きかた』徳元大也著 沖縄文化社・1782円

 沖縄の観光の中でも「まちまーい」と呼ばれるガイド付きの散策ツアーが那覇市を中心に定番となってきた。これまでガイドブックではなかなか紹介されなかったような地元の人が知っている店や歴史をわかりやすく案内し、まるで旧知の場所に感じる散策は、沖縄を何度も訪れる人たちにとって新鮮なプログラムといえる。

 本書は、そんな沖縄好きの人でもあまり聞かないような民話や伝説をひも解き、さらに沖縄の魅力を知ってもらうにはぴったりの内容となっている。南部、中部、北部と地域ごとに分かれており、また、章の間に沖縄独特の用語の解説や歴史解説、沖縄の伝説の特徴など、本書を読むにも沖縄の歴史を理解する上でも重宝する知識がコンパクトに詰まっている。

 私は、高校生まで宜野湾市の喜友名で過ごした。特に母校周辺である普天間については思い入れがあり、普天間神宮は初詣、お花見と季節ごとの行事や何か不安があるとお参りに行ったなじみが深い場所である。その普天間神宮のページは特に丁寧に読んだ。知っていた話、聞いていた話ではあるが人の記憶とは曖昧で、活字であらためて読み返すと、知っていた話と違っているのも面白い。また、その発祥地を掘り下げていたのも興味深かった。一つの話も3~4ページと短く、携帯端末などで本を読むようになった人も手にしやすい長さが良かった。短いからといって内容が薄いかというとそうではなく丁寧に解説されており、地域の人から聞いた話などがまとまっていた。きれいな写真と地図が挿入されたシンプルなデザインは読む年齢層を選ばないと感じた。

 冒頭の話に戻ると、まちまーいとは「街を歩く」という沖縄の言葉でもある。ガイドの話が魅力的な事はいうべくもあらず、ではあるが、思い立ったら気軽に名所を訪れ、昔人がどのような思いでその話を聞き、語り継いでいたのか実際の風景と合わせながら伝説の背景に思いをはせてみたい。本書は、そんな小旅行を充実させる小気味よい相棒といえそうだ。

 (正木ひかる・沖縄市観光物産振興協会観光誘客プロモーション所属)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 とくもと・ひろや 1985年沖縄県出身。静岡大学理学部物理学科卒。エンジニアを経て、編集・DTP(パソコン編集)などを学び、現在は沖縄文化社でオペレーター兼編集者として勤務。