「はいたいコラム」 島と雪国は恵まれた宝島


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 島んちゅの皆さん、はいたい~! 岩手県一の豪雪地帯! 西和賀町へ行ってきました。雪を生かした食で町をPRしようと、生産者、食品業者、地元デザイナーが一体となってブランド化に取り組んでいます。先日開かれた「ユキノチカラ」フォーラムでは、お米、地ビール、わらび餅など8商品の新作発表がありました。

 西和賀町の細井洋行町長に初めてお会いしたのは1年前、農水省6次産業化サミットの席上でした。「雪の町を丸ごと6次化する」考えは頼もしく魅力的でしたが、町一番の特産が蕨(ワラビ)だと聞いて、わたしは思わず叫んだのです。「え?山菜の中でも、蕨って、珍しくないじゃないですかあ?」

 すると、優しい細井町長はこうおっしゃいました。山菜の神様のようなすごい蕨名人がいること、耕作放棄地で蕨の産地化に成功したこと、積雪で土の温度が保たれ、春は雪解け水に恵まれることなどから、太くてトロっとした良質な蕨ができるというのです。近隣では既に知られていたこの「西わらび」を全国展開するため、デザインを取り入れ、雪の町丸ごとPRを打ち出したのでした。

 栽培を始めたのは蕨名人の小田島薫さん(86)。都会へ出た弟妹へ毎年山菜を送っていましたが、山で採るのも大変になり、休耕田へ移植したのがきっかけで、かつて20人だった生産者は120人以上に増えました。さらに根っこを利用し「わらび粉」の生産・加工も始まり、生産者と町の菓子店3軒が連携して、西和賀産100%のさまざまな「わらび餅」が誕生しました。

 また、このプロジェクトが画期的なのは、農商工連携に加えて信用金庫が参加しているところです。地元に元気がないと困るのは信金も同じ。つながり合い、支え合ってこその経済です。

 地域が手を取り合って歩き始めた途端、「雪に閉ざされていた陸の孤島」は、「雪に恵まれた宝島」になりました。

 地方創生とは土地の資源を生かした地域経済の自立です。辺境ゆえの孤立を、独立、自立と捉えると、離島や陸の孤島は圧倒的に優位です。ガラパゴス上等~! 孤島上等~!で郷土のオリジナルを発信しようじゃありませんか。気候風土の厳しさと恵みは紙一重です。それらを天からの贈り物だと喜び、楽しむ地域は、人もにぎわいも活気も呼び込みます。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)