『高江洲満詩集 パンダが桜を見た』 言葉と絵の調和した世界


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『高江洲満詩集 パンダが桜を見た』沖縄自分史センター・1404円

 著者は、1972年に那覇市で生まれ、中学、高校を経て、大学中退。県内企業に勤めた後、2009年大阪の会社に就職したが、病を得て15年43歳で亡くなった 

 著者は、30代に170篇を超える詩を収めた総400ページほどの詩集『降り注ぐ太陽の光 降り注ぐ夜の荘厳』(06年)を自費出版で出しており、今回は2冊目で没後出版である。

 今回の詩集は、著者が大阪に行った後、著者のインターネット上のブログ「ヤサシイ刃物」に、15年までに発表したものの中から、主に2010年代の詩89篇が選択され、収録されている。

 著者の詩の特徴は、「ちいさな諍いや/わずかな喧嘩はもういいや/その誠実さを信じたから/わたしはずっとあなたと」(「月が見えなかった夜」)というような抒情(じょじょう)性にあると思う。「古いアパートと隣のアパートとの狭い隙間を抜けると/うらびれた薬局があり」で始まる「苔」という少年時代の回想詩など、しみじみとした味わいがある。しかし、決して完成度が高い作品とは言えない。著者の詩は、それぞれ1篇ずつの作品全体としてのイメージの統一感がなく、詩語の選択や作品の構成にもっと訓練が必要だった。

 著者は詩を書く動機をちょっと諧謔(かいぎゃく)めかして次のように表現している。「僕は詩人になりたかった//でも僕には人の心を打つ詩を書く自信がなかった/僕は結局絵描きになり/今/誰かの姿や風景を描いている」(「二束三文」)

 確かに、この詩集は、詩画集の体裁である。ほとんどすべての詩に、著者の描いたデジタルイラストが添えられている。「告白」という詩には、雪を連想させるパステルカラーの白地にまるで浮いている言葉のような灰色の帯や茶色の紐(ひも)が描かれている。「恋愛」「雨だれ」「透明な昆虫」「重量」「金貨」「岬」などのイラストは詩にマッチしている。総じて透明感のあるイラストが良い。詩の言葉のフレーズとイラストのコラボレーションを楽しみたい。

 (うらいちら・詩人、久留米大学比較文化研究所教員)

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 たかえす・みつる 1972年、那覇市出身。2015年7月に病気のため43歳で死去。06年に第1詩集「降り注ぐ太陽の光 降り注ぐ夜の荘厳」を発刊した。