【島人の目】温泉


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 「米国に長くいて、日本の何が恋しくなるか」と聞かれたら、こちらの日本の友人らの多くは「温泉」と答える。景勝地の旅館で温泉に入り、懐石料理を頂く時が至福の時であると。私の連れも大の温泉好きだ。昨年は奥日光へ。おもてなし精神100パーセント全開のお宿の若旦那は、何と沖縄県出身だった。江戸の風流な扇子投げを楽しませてもらった。

 米国に温泉はというと、バージニア州には「Hot Springs」や「Warm Springs」という名前の通りの温泉地がいくつかある。1761年に鉱物を含む暖かい水が発見され、温泉地開発が進んだ。その中の一つ、温泉リゾートとして有名な「ザ・ホームステッド」は創立250年で、496部屋の客室がある有名な温泉施設だ。

 温泉は、温泉プールになっていて、利用者は水着で入る。ルーズベルト、ニクソン、カーター、レーガンなど歴代の大統領らが訪れているそうだ。

 第2次世界大戦開戦後は軍に収用され、日本の駐米外交官一家、785人が収容されたと言われる。砂漠地帯など、他の日系人の過酷な強制収容所と違い、温かいホスピタリティーを味わったようだ。

 もう一つのB&Bの温泉宿がワシントンDCから2時間ほどの所にある。日本人の奥さんと外交官だったご主人、そして娘さん3人で経営。ミネラル豊富な湧き水を沸かしているが、二つある風呂池はかなり大きく、全てが日本式で日本の温泉気分が満喫できる。

 朝ご飯に和食が出るのがうれしい。森の中の自然に癒やされ、アットホームなおもてなしが人気だ。シーズン中の予約はなかなか取れない。

 さて、那覇市に近い島に天然温泉がある事を知った連れは、次回の帰国時に海や飛行機が見えるその大露天風呂を楽しみにしているようだ。
(鈴木多美子、バージニア通信員)