中国の北京イオン(古澤康之社長)は10月27日から10日間の日程で「沖縄フェア」を開催する。北京と天津のイオン9店舗という広域での展開は初めて。輸入規制が多く通関手続きの壁がある中国ではラード由来の「ちんすこう」が輸入禁止とされるなど、どれだけの特産品を紹介できるか手探りが続く。
「難易度は高いが、商流を広げる契機にしたい」と県産品の大陸市場攻略を後押ししているのは、北京イオン副社長の本村努さん(48)、輸入商社社長の長嶺佳治さん(41)。共に現地で活躍する2人の沖縄県出身者だ。
北京の沖縄フェアに向け、1日に糸満市内で開かれた商談会。ファッションキャンディ(宜野湾市)の與世田哲さんは、主力の「ちんすこうショコラ」ではなく、シーサーをかたどったチョコレート商品を北京イオンのバイヤーに売り込んでいた。「本来なら観光客にも人気の商品を出したい。でも中国ではラードがNG」と肩を落とす。
2010年の口蹄(こうてい)疫の国内発生を受け、中国は日本からの豚や牛の生肉や加工品の輸入を停止している。豚由来のラードを使う「ちんすこう」も対象だ。
口蹄疫に限らずBSEや鳥インフルエンザの侵入防止規制をはじめ、残留農薬や食品添加物が基準内であることを証明する必要もある。さらには東京電力福島第1原発事故に伴う日本の一部地域からの食品の輸入規制も続いており、中国で輸入通関をパスするには、原材料から包装紙までの産地証明など提出書類やラベル表示を整えることが求められる。
イオン琉球商品本部の上地安信さんは「ソーキそばなら、麺はOKでもソーキはアウト。北京の物産展に出せる商品なのか、規制の有無を調べるだけで気が遠くなる作業だ」と述べる。與世田さんは「ラードの代わりに植物油を使うなど、中国の輸入規制に合わせた開発も考える」と語る。
中国への県産品の販路開拓で、県も福建省との経済連携の覚書(MOU)に基づき、厦門(アモイ)の自由貿易試験区に向けた輸出実証実験を重ねている。
北京で輸入商社「江戸・北京国際貿易」を経営する長嶺社長は「商品登録をして通関をクリアするまで3カ月かかる。コストと時間を要する中国大陸への輸出はハードルが高い」と現地事情を説明する。生鮮など賞味期限の短い商品は輸出が難しくなることから、通関手続きの迅速化に向けて行政、民間とも試行錯誤が続く。
今回の北京での沖縄フェアは、JCC(糸満市、渕辺俊紀社長)の国際事業部が県内19社の商品を集約し、コンテナに混載して北京へ輸送。長嶺社長の江戸・北京国際貿易社が輸入元として、物産展を展開する北京イオンへ県産品を卸す流通形態を取る。
イオンマレーシア商品部長などを経て、11年に副社長兼営業本部長として北京イオンに赴任した本村さんは「北京で沖縄の認知度は急速に高まっている。知名度は高いが中国国内で沖縄の物産は手に入らない」と指摘する。「中国では生活が豊かになり、ワンランク上を望むニーズが高まっている。長寿の島、美と健康という特長を出し、県産品のブランディングにつなげたい」と意気込む。
長嶺さんは高校卒業後に中国に渡り、北京の対外貿易大学を卒業。日系物流会社勤務を経て、04年に自ら起業した。「ウチナーンチュとして県産品を中国に輸入して販売していく。商品輸入の実績をつくって運ぶ量が増えれば、沖縄の輸送コスト高を軽減する一助にもなる」と語った。