「無関心ではいられない」 静岡の高校生が沖縄を取材する理由 基地、地域振興…揺れる住民の思いを聞く


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ベトナム戦争当時のコザの町の様子について、古堅宗光さん(右端)の説明に耳を傾ける(左から)池田早穂さん、原川成羽さん、溝口信宏教諭、川内聖流さん=29日、沖縄市

 静岡市の静岡大成高校放送部の生徒3人が春休みを活用して来県し、戦後74年にわたり米軍基地と隣り合わせにある沖縄の現状を取材した。本土ではなかなか報じられない沖縄の基地問題に「無関心ではいられない」と危機感を抱いた同校3年の原川成羽(せいは)さん(17)が中心となり企画した。3人は基地の存在に翻弄(ほんろう)される県民の思いを丁寧に聞き取り、ビデオカメラに収めた。

 3年の池田早穂さん(17)と2年の川内聖流(せな)さん(16)も一緒に来県した。3人は3月27~30日の滞在中、民意に反し新基地建設が進められる名護市辺野古の現場を取材したほか、汀間区の新名善治区長にインタビューし、基地建設と地域振興の狭間で揺れる住民の複雑な心境に耳を傾けた。辺野古区在住で新基地建設に賛成する住民の思いも聞いた。

 29日には、沖縄市戦後文化展示館ヒストリートで、コザの戦後史を語ってきた古堅宗光さんから話を聞いた。米軍統治に抵抗し、民衆が約80台の米軍車両を焼き払った1970年12月のコザ騒動などについて学んだ。

 池田さんは、ヒストリートに展示された写真の中でも、毒ガス撤去を求める70年の県民大会で、米軍に抗議する同年代の女性を撮った一枚が印象に残った。「基地の話題は敬遠されがちだが、向き合わないと解決できない。自分の意思を大切にし、行動できる人になりたい」と力を込めた。

 川内さんはコザの街からベトナム戦争へ出兵し、二度と帰ってくることのなかった米兵の話が印象的だったと振り返り「戦争は国籍を問わず人を狂わせ、悲しませる。二度と起こしてはならない」と決意を新たにした。

 原川さんは取材で「多くの人が口をそろえて、沖縄に必要なのは雇用だと話していた」と指摘し、「潤沢な雇用機会と経済的な自立が基地問題解決の糸口になるかもしれない」と話した。

 3人は今後、撮影した映像を60分以内に編集し、「地方の時代」映像祭に出展し、沖縄の基地問題を全国に発信する考えだ。
 (当銘千絵)